VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

疎遠な関係性と私

帰りたかった家(4)

名作リバイバル劇場 「帰りたかった家(3)」からのつづき・・・ by T.A. 「お父さんが生きていれば、 もっといい縁談があったのに」 折に触れ、姑(しゅうとめ)は心の底から悔しそうに嘆いた。 彼女の夫はすでに他界していた。 舅(しゅうと)が生きていれ…

帰りたかった家(3)

名作リバイバル劇場 「帰りたかった家(2)」からのつづき・・・ by T.A. 夫とは、見合い結婚だった。 彼にしてみれば、 惚れた腫れたで一緒になった訳ではない相手に、 自分がせっせと稼いだ給料を渡す気になど、 なるものだろうか。 ケチんぼのわたしには…

帰りたかった家(2)

名作リバイバル劇場 「帰りたかった家(1)」からのつづき・・・ by T.A. 夫の実家では わたしはお客さんではなく、嫁。 ご主人様に食べさせてもらう立場なのであって、 当然なのかもしれないが、 一応は男女平等の 教育を受けてきた者にとって、 理不尽に思…

帰りたかった家(1)

名作リバイバル劇場 今まで本プロジェクトで発信してきた トラウマ・サバイバーたちの「生の声」も 過去記事の中に埋もれてしまっているものがあります。 そうした中から 検索されることの多い記事や、 かつてご好評だった秀逸な記事を、 新しい編集版でリバ…

疎遠な親子(4)

「疎遠な親子(3)」からのつづき・・・ by T.A. これまで述べてきたような 現在の息子と私との関係性が 「寂しくない」と言えば、 それはウソになる。 よその親子のありようを見聞きすると、 なおさらである。 今の時代、メールがあったからよかったものの…

疎遠な親子(3)

「疎遠な親子(2)」からのつづき・・・ by T.A. 母親であるわたしが あまりにも呑気そうに見えるので、 業を煮やしたわたしの両親が、 孫の新居へ様子を見に出かけて行った。 彼の引っ越しに一役買えなかったのも、 不満だったのだと思う。 たまたまマンシ…

疎遠な親子(2)

「疎遠な親子(1)」からのつづき・・・ by T.A. 息子とは、4年余り顔を合わせていない。 その間、メールでのやりとりのみである。 ラケットを送ってくれだの、 家賃出してくれだの、 都合のいい時ばかり連絡してくるのが癪であったが、 それが唯一の安否確…

疎遠な親子(1)

「されど掃除機(8)」からのつづき・・・ by T.A. 「近いうちに就職する。 マンション借りるから 保証人になってくれない?」 というメールで始まった息子の引っ越し騒動も、 それまで住んでいた学生アパートの引き渡しや 布団を送るといった、 今思えば、…

対人恐怖とハサミは使いよう(6)

「対人恐怖とハサミは使いよう(5)」からのつづき・・・ by T.A. このようにヒガシ氏に一旦引き渡された仕事は、 それも束の間、 再びキタ氏に戻されることになった。 しかも彼には、 班長としての仕事もある。 あたりの良さが売りのキタ氏のこと、 面と向…

対人恐怖とハサミは使いよう(5)

「対人恐怖とハサミは使いよう(4)」からのつづき・・・ by T.A. 異動からひと月ばかりたったある日のこと。 そのヒガシ氏がぱたりと来なくなった。上司からは、はっきりとした説明も何もない。 毎朝、彼から課長に電話がかかってくる。 「顔を見て話したほ…

対人恐怖とハサミは使いよう(4)

「対人恐怖とハサミは使いよう(3)」からのつづき・・・ by T.A. こうして、キタ氏の身辺は大げさに、 かつ、騒々しく彩られながら 一年という月日が経った。 その過剰な適応ぶりがめでたく実を結び、 彼は班長に昇格し、 新たに某病院から異動してきたヒガ…

対人恐怖とハサミは使いよう(3)

「対人恐怖とハサミは使いよう(2)」からのつづき・・・ by T.A. キタ氏(仮名)は、 職場でおきることはすべて 自分の責任であると思っている。 あらゆる用事が列をなして 彼のところにやってくる。 廊下を歩けば、 掃除のおばちゃんの愚痴の聞き役として…

対人恐怖とハサミは使いよう(2)

「対人恐怖とハサミは使いよう(1)」からのつづき・・・ by T.A. 彼女があれこれ理由をつけて 出勤しなくなった。 正式に診断書類が出たのなら仕方ない。 それでは、彼女の仕事をどうしたものか。 侃々諤々、話しあいの場がもたれた… と言いたいところだが…

対人恐怖とハサミは使いよう(1)

by T.A. キタ氏は、 昨年春、私とともに、 管理課に異動してきた男性である。 彼の第一印象は、 とにかく人あたりがいい ということであった。 ここへ配属される前は、 本庁勤務だったそうだが、 毎日のように帰宅は午前様。 これでは家庭が回らないというこ…

世にはばかる(10)

「世にはばかる(9)」からのつづき・・・ by T.A. 「俺がいなかったら 皆さんが困るんだからな」 とは言うものの、 彼がいなくて誰も困らなかったら、 困るのはむしろ彼自身。 彼が求めるものは、 感謝やねぎらい、賞賛の言葉など、 何らかの“反応”である。…

世にはばかる(9)

「世にはばかる(8)」からのつづき…… by T.A. あの粛々たる辞令交付式から1年2ヶ月、 めでたく私は異動した。 現在の職場は、ありふれた事務所である。 自分の頭のハエも終えないのに、 他人の仕事にまで顔をつっこみ、 口を出し、 些細なできごとも大げ…

世にはばかる(8)

「世にはばかる(7)」からのつづき・・・ by T.A. 私が勤めていた院内のロビーには、 目安箱が設置してあった。 いわゆる「患者様の声」である。 「受付に飾ってある赤いバラは、 血の色を連想させるので、 やめてください」 だの、 「内科外来の、 ミッキ…

世にはばかる(7)

「世にはばかる(6)」からのつづき・・・ by T.A. 私が勤めていた大きな病院の 地下の廊下を突き進んだどん詰まり、 北病棟が精神科であった。 この診療科目名だけは、 なぜか02というコード番号で 呼ばれていた。 当時私自身が、すでに 別の精神科クリニ…

世にはばかる(6)

「世にはばかる(5)」からのつづき・・・ by T.A まだ午後の診察も終わっていない 夕方5時に帰り始めることは、 私の勤めている病院では非常識とされる。 同じように 昼休みをきっちり1時間とることも 私の勤めている病院では非常識とされる。 食事に関す…

世にはばかる(5)

「世にはばかる(4)」からのつづき・・・ by T.A. 病院という職場は、 昼休みや終業の鐘が鳴らない。 にもかかわらず、私は、 昼12時になるや、 すぐさま席を立って食堂へ向かい、 夕方5時になれば、 帰り支度をしてとっととご帰還する。 あたかも、 一日…

世にはばかる(4)

「世にはばかる(3)」からのつづき・・・ by T.A. 十年ほど前、私は 子ども専門の病院の医事課に異動となった。 四月の辞令交付式は、壮観であった。 着任した白衣の面々が整列し、 迎える側の白衣の職員が、 講堂の周りをぐるりと取り囲む。 私は場違いな…

世にはばかる(3)

「世にはばかる(2)」からのつづき・・・ by T.A. 「来週の土日は仕事です。 その後はもう年末だし…、 1月にまたメールにするね」 というメールがきたので、 「たぶん1月も何らかの”ご用”ができて、 ムリだと思いますよ。 時間は”その気”がないと、作れな…

世にはばかる(2)

「世にはばかる(1)」からのつづき・・・ by T.A. 「あなたに会いたいけど、今すごく忙しくて。 …また連絡するね」 と、メールの度に書いてくる友人かいる。 私のひがみかもしれないが、あまりにも 「忙しい、忙しい」 を連発されると、 「あなたに会うよりも…

世にはばかる(1)

「されど掃除機(8)」からのつづき・・・ by T.A. カウンセリングを受けていた時、 宿題が出た。 「なぜお母さんは、 物に当り散らしたのか、聞いてごらん」 私は家に帰って、 早速母に確かめた。 母曰く、 「怒鳴りつけても、 全然こたえてないのが、 ふて…

されど掃除機(8)

「されど掃除機(7)」からのつづき・・・ by T.A. 私は人から何か聞かれたり頼まれたりしたら、 すぐ反応しなくてはいけない、 答えなくてはいけない と思う余り、 つい、つかなくてもいい嘘をつく ことになったりする。 私の家では、 隠し事や、両親の提案…

されど掃除機(7)

「されど掃除機(6)」からのつづき・・・ by T.A. こうして掃除機は無事、 息子のもとに送られた。 「会おうともせずに 物だけ送ってくれなどというのはケシカラン。 掃除機提げて乗り込んでやる」 と息巻いていた両親も、 「本当は、ひと目、元気な姿を見…

されど掃除機(6)

「されど掃除機(5)」からのつづき・・・ By T.A. 結局、 「掃除機は送る」 ということと、 「就職のお祝いにご馳走するので、 都合のいい日を教えてください」 ということを息子にメールした。 おそらく、都合のいい日が 知らされてくることはないだろう。…

されど掃除機(5)

「されど掃除機(4)」からのつづき・・・ by T.A. 以前、主治医から 「腐ったミルク」の話を聞いた。 どういう文脈でその言葉を聴いたのか忘れたが、 「相手がこうして欲しい」 ということではなく、 「自分が相手にどうしてやりたいか」 という気持ちだけ…

されど掃除機(4)

「されど掃除機(3)」からのつづき・・・ by T.A. 私の母は、自分が引っ越すわけでもないのに、 孫にあたる私の息子の新居を見せてもらい、 そこにあうカーテンやら ちょっとした家具、食器などを 取り揃えるのに 一役買いたかったらしい。 むかし私が結婚…

されど掃除機(3)

「されど掃除機(2)」からのつづき・・・ by T.A. 守りの体制にはいると、 両親の寂しさや息子の立場について、 また、自分の考えについて、 客観的に推し量れなくなる。 今回、息子の入居していた 学生アパートを解約するのにあたり、 契約者の私が 部屋の…

All Right Reserved (C)VOSOT 2013-2020