VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

長男の放逐(69)ザスト被災地支援の内幕<9>お嬢様の大冒険 ネットカフェ・スリーパー

長男の放逐(68)」からのつづき・・・
#齊藤學被害 #精神医療被害 #精神療法被害
by ぼそっと池井多
 
 
「前の晩に何をしててもいいですけど、
 現地に入ったら
 ちゃんと活動してくださいよ。
 
 プロフェッショナリズムが
 足らないんじゃないですか」
 
というのが、おそらくそのとき
私が真子さん(仮名)に言いたかったことである。
 
けれど、じっさいにこれを私が当時、
口にできたとしても、
真子さんはいちおう既成の論理で武装していて、
こういう答えが返ってくることが予想された。
 
「プロは無理しませんよ。
 てきとうに手を抜けるのが真のプロです。
 
 ってか、だいたい被災地支援って
 ボランティアじゃないですか」
 
そう切り返されたら、
私は言葉に詰まるかもしれない。
 
しかし、私は
 
ボランティアだからプロ意識は必要ない
ってものじゃない
 
と思うのである。
 
私としたら、
たとえ一円ももらえないボランティアでも、
いったん請け負ったからには、
全力で取り組むものだと思っている。
 
そこに、かかっているのは、
雇用契約ではなく自己尊厳ではあるまいか。
 
イメージ 3
3.11の当日、津波に呑まれていく町や家や人をテレビ画面の中に見て、何もできない己(おの)れの無力さにうちひしがれて、歯ぎしりするほどの焦燥をおぼえたことを、忘れるわけにいかないのだ。
 
考えてみれば、
向精神薬でなんとかごまかして、
一円の得にもならないボランティアに血道をあげて、
東京では無職の生活保護受給者であるというところに、
人は私の病理を見ることであろう。
 
その病理を解き明かし、
この暗闇から抜け出したいから、
塞翁先生(仮名)のクリニックに長く通っている。
 
やはり、それは
けっして存在承認しない母親との関係に
原因はさかのぼるように思えるのである。
 
私は1998年、
喉にささった魚の小骨がぽろっと取れるように、
あることが腑に落ちて
長年苦しんでいた強迫症状が嘘のように治った。
 
あのような奇蹟が、
ふたたび起きるのがさらなる治療であろうと思う。
 
もう一度、
喉にささった魚の小骨がぽろっと取れるように、
何かが納得が行けて腑に落ちれば、
現在の私の人生の数々のボタンの掛け違いも
正されていく予感がするのだが、
いまの治療共同体でなかなかそれが訪れてこない。
 
それどころか、
数年もの間、一円ももらわずに
さんざん貢献したはずのNPO法人ザスト(*1)からも、
まるで罪人のようにある日とつぜん放逐された(*2)すえに、
先日はかろうじてつながっていた
リンクさえ無断で切られる(*3)という始末。
 
これでは、自己評価はますます下がるばかりである。
 
*1:ザスト(仮称):塞翁先生を理事長とするNPO
詳しくは「ザストとは」参照。
 
これは、向こうがおかしいのか、
それとも、私がおかしいのか。
 
いいかげんに人をなめて生きていったほうが「勝ち」で、
精神的にも「正常」であるという想像には、
深い谷底をのぞきこむような
ゾッとするものがあった。
 
 
 
 
 
 
十浜地区に入る前夜、仙台で
私がしっかりとビジネスホテルを確保することに関して、
 
「ネットカフェでも寝られるよ」
 
と、真子さんは何度も言うのであった。
 
「べつにそうしてって言ってるわけじゃないけど、
 私だったらネットカフェでもぐっすり眠れる。
 
 うちの会社の仕事で、
 ほかの地方に行くときも、
 できるだけネットカフェに泊まるようにしてる」
 
などという。
 
「べつにそうしてって言ってるわけじゃない」
と言いながら、
何度も同じことを言うところが、どうしても
「そうしたら」
と言っているように私には聞こえるのであった。
 
この「ネットカフェ宿泊」をめぐる話は、
まことに小さな話題に思われるかもしれないが、
のちにいろいろな問題への発展性がひそんでいた。
 
一つめは、コスト・パフォーマンスの問題である。
 
被災地支援活動に関しては私が実施者、
真子さんが監査役のような立場になっていたから、
真子さんの
「ネットカフェでも泊まれるよ」
という言葉は暗に、
「もっと安く上げろよ」
という要請とも受け取れた。
 
「東京で貧乏暮らししてるからといって
 出張に出たときに、
 この時ばかりとホテルのフカフカのベッドに寝てるんじゃないよ。
 
 自分自身は出張のときも
 ネットカフェに泊まるほどタフな社長だよ」
 
とアピールしているように聞こえるといったら、
また私が被害妄想になるだろうか。
 
それに対して私は、
 
いくらネットカフェに泊まって
 宿泊費を安くあげても
 現地で居眠りしているようじゃ
 しょうがないではないか
 
という反論を隠し持っている。
 
真子さんは、社長であるので、
彼女のコスト感覚はそのまま
彼女の会社、ワイエフエフ(仮称)の経営に出ていた。
 
小さな金額の出し入れについては、じつに細かい。
 
それでいて、真子さんは
日々、ワイエフエフの業務が終ってから、
定食屋チェーン「す○家」でバイトをしているのだ、
ということを嬉しそうに私に語るのである。
 
だってワイエフエフやってても
 お金がないんだもん
 
という端的な事情説明もついたが、
主に真子さんの語調は、
「す○家」がいかにすばらしい職場か
いかにそこで自分がいきいきと働いているか
伝えてくれているものであった。
 
しかし、私はいつものごとく、ここで
「それはいいですね」
などと素直に喜んであげられないのである。
 
私自身、社会的に「働いていない人」なので、
定食屋チェーンみたいなハードな職場でバイトしている人を
「えらいな。自分にはできないな」
とまぶしく見る視線も持っている。
 
だが、それと同時に
 
真子さん、あなたは社長をやっているわけでしょう?
 株式会社ワイエフエフ(仮称)という
 立派な生産手段を持っているわけでしょう。
 
 だったら、お金がないからといって
 他の会社でバイトなんかして小金をかせいでいないで、
 その時間、自分の会社をよくすることに
 使ったらいいじゃないですか。
 
 経営努力が足りないんじゃないですか。
 
 次々と辞めていくカウンセラーたちとの
 人間的なコミュニケーションをはかって
 会社への不満を事前に聞き取るとか、
 事業家のためのセミナーに出て勉強するとか
 いくらでも収益につなげる方法はあるんじゃないですか
 
などなどといった、部外者の勝手な声が
喉元までこみあげてきたりもするのである。
 
私は商法など読んだことないからわからないが、
たとえ社長が他社でアルバイトをしても、
バイト先が競合他社でない場合は、
「取締役の利益相反行為
とやらには該当しないのだろうか。
 
また、たとえ該当しても
ワイエフエフの株主はどうせ自分の親族たちであろうから、
利益を損なわれたと訴える者は出てこないので、
問題ではないのだろうか。
 
経営のケの字も手がけたことのない私が言えた義理ではないが、
それでもやはり
「出張先ではネットカフェに泊まる」
と誇らしげに語り、
いっぽう「す○家」でバイトすることで損失補填している
真子さんの経営哲学には、
いささか首をかしげるものがあった。
 
 
 
 
 
思えば、その2年後、ワイエフエフは、
それまでにないまとまった収益をあげる方向に
大きく舵を切った。
 

 

おそらく、それまで累積していた損失を
一気に挽回するするためであろう。
 
ところが、あろうことか、
それはわれらがザストを占領し、
リカモリング講座(*4)などという事業を立ち上げて、
私たち下級患者から金を吸い上げていくシステムであった。
 
*4:仮称。「リ(Re)」は「再び」、
「カモリング」は「カモにする」の現在分詞。
 
 
「娘よ、お前なんかに任せておけない」
 
と、父・塞翁先生が自ら乗り出し、
ワイエフエフの経営再建を図っている結果が、
現在のリカモリング制度でもあるのではないか。
 
つまり、「大塚家具」(*5)だったのである。
 
*5:「大塚家具」参照
 
 
 
 
 
・・・「長男の放逐(70)」へつづく

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ザスト被災地支援物語「お嬢様の大冒険」はこちらに続きます。

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ここまでのお話

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    おもしろいですねぇ。読み物としてという意味ですよ。読む人のことを考えて書いてくださっているんですよね。ほんとにそんなことあるの!?ってびっくりするような事実の陰で、プッと不謹慎な笑いを誘ってくれる心遣い。笑っちゃまずいよね、悪いよねと思いながらも先を読まずにはいられない。印刷が悪くても活字で読めれば一層2倍にも楽しめるのに、そこは残念なことです。ボランティアにつきましてはIJさんも触れてますが、私も過去に長らくボランティアをメインとした人生を送ってきたので、言いたいことがあり、某NPO機関紙の投稿で準備してるのですが、なかなか発表できないでいます。そこがまた残念です。あれやこれありますが、IJさんがこのように過去の出来事をつまびらかに語って下さるのはとてもありがといと存じます。このような場をつくってくださったIJさんと、いあわせた好運に感謝です。ありがとうございます。 削除

    sma***** ]

    2015/11/7(土) 午後 6:43

    返信する
  •                       

    sma***** さま コメントをどうもありがとうございます。

    過分な言葉の数々、まことにいたみいります。
    ボランティアについては、いろいろ深く考えさせられます。「自分たちはいかに良いことをしたか」といった表向きのクリーンな話はたくさん宣伝されるのですが、そこに関わる当事者たちのエゴや思惑も含めた、ボランティアの真相をえぐる話については、なかなか書かれることがありません。自己分析と反省を兼ねて、言葉にしていきたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。 削除

    チームぼそっと

    2015/11/7(土) 午後 8:08

    返信する
  •                       

    いつも頭いいナァ~‥と思う、ぼそっと様の記事には恐縮してしまってコメントしたくてもなかなか出来まへん‥汗と涙

    でも‥こんな風に‥おっしゃる通りの自己尊厳で有るボランティアに赴き‥しかも自分の足を使って何時間も歩いて当時の事を肌で感じたりしてから行く‥そんな凄い努力をして真剣に傾聴出来るJIさまが、何故カウンセラー的なブログはやらないのかなぁ‥と思っていた事が、今回チト‥私の恩人(‥との感謝の気持ちは忘れません‥)のブログでショックを受けたりしながら‥何となく自分なりに解った気がして‥

    ‥って変な意味ではなく、本当に嘘の無い真面目な方ダ‥と改めて思いついついコメント(^^ゞ内緒でww

    何すかこの真子‥(呼び捨て)

    ぼそっとさまは、真剣だからこそ、しっかりとビジネスホテルを確保して、ちゃん無理をしない☆

    お笑いは私も好きなのでそれ自体は良いとしても、当日に居眠りする人間がネットカフェで寝ろだぁ~?ww「あんたみたくネットカフェで寝たり前日にお笑いを見て当日寝るwwもう何から何まで図太い神経の遊びにきてるアホと私は違う‥アホは今すぐ荷物まとめて帰れ♪」と私なら汗 削除

    ゚・☆Marie☆。.♪ ]

     

    2015/11/9(月) 午後 3:10

    返信する
  •                       

    2015/11/9(月) 午後 3:10内緒の方 コメントをどうもありがとうございます。

    過分な言葉の数々、まことにおそれいります。

    私は対等な立場でいろいろな方とお話しをするのは好きですが、カウンセラーや治療者になれる資格はありません。

    真子さんは、彼女なりに一所懸命だったのかもしれませんが、支援に臨む姿勢は、たしかに私とは違いました。被災地支援、とくに心のケアは、それ自体、巨大な精神医療でもありました。一方では、そこに向かった私のような支援者は「必要とされる必要」という病も持っていたのかもしれません。そうしたことをこの続きで書けたら、と思っております。
    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 削除

    チームぼそっと

    2015/11/9(月) 午後 4:48

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