VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

長男の放逐(78)六割の質問

長男の放逐(77)」からのつづき・・・

#齊藤學被害 #精神医療被害 #精神療法被害

 

by ぼそっと池井多

 

前回長男の放逐(77)までお話ししてきた
被災地支援はまだまだ続いていく。
 
それと並行して、
SIWAb.(仮称)との内戦が勃発していったわけであるが、
その重要な分岐点にあたるのが、
いわゆるマリナさんやり逃げ事件であり、
それについては「予期せぬ中断」(*1)に書かせていただいた。
 
 
ところが、私がマリナさんやり逃げ事件を言葉にして、
昨年2015年9月16日にこのブログに掲げたあと、9月29日に
当のマリナさん自身とその件について
まことに貴重な会話をかわす機会が訪れたのである。
 
治療ミーティングの客席で、
定刻通りになかなかやってこない塞翁先生を待ちながら
前と後ろの座席のあいだで
落ちつかない空気を縫って交わされた会話であった。
 
まずマリナさんは、私が「匕首の確認」(*2)に書いた
私の彼女についての仮説を明晰に否定した。
 
 
性風俗嬢として働いていた人の心のうちは、
しょせん私のような、
そういう綺麗処に行ったこともないケチな男の
貧弱な想像力がおよびきれないということが、
これで明らかにされてしまった。
 
そのうえで、
2012年10月31日のインタビューで起こった事件に関しては、
私が「予期せぬ中断」に書いたとおりであることを
肯定してくれた。
 
すなわち、江青さん(仮名)の支配的な中断がなければ、
すべては起こらなかったことなのである。
 
また、マリナさんが
そののちの塞翁先生の治療ミーティングで
私の「やり逃げ」と表現した理由については、
そのインタビューにおいて私が彼女に質問したことが、
 
 
幼少期の性虐待の詳細…4
 
大人になって性風俗で働いていたころの話…6
 
 
という割合であったから、と説明した。
 
これはまさしく核心をついた、するどい説明であった。
 
たしかに、私がマリナさんに訊いたことがらは、
そのような比率で、性風俗で働いていたころの話が
比較的に多かったのである。
 
それでマリナさんは、
私が、性風俗嬢としての彼女に興味があるように
思ってしまったというわけであった。
 
なるほど、それならば、そう思われても
仕方のない成り行きであったかもしれない。
 
私はむしろ、「実存の絆(*3)に書かせていただいたように
世間からマイナスの烙印を捺されているところに
マリナさんと私自身との共通項を感じ取っていたのだが。
 
 
 
 
それでは、なぜ私は
性風俗嬢として働いていたころの話を
重点的に訊いたのか。
 
私は、私なりに明快な理由があった。
 
じつは、この10月31日の収録に先立って、
その5か月前、2012年5月2日に塞翁先生が聞き手となって
江青さん(仮名)、マリナさんをインタビューする機会があった。
 
当時、ここまではっきりと近親姦性被害の実在を
証言する映像は日本になかったのではないか。
 
今ではすっかり、私などは、
治療共同体の逆賊のように悪党視されているようだが、
いまの「チームぼそっと」の原型が、
SIWAb.(仮称)の黎明期(れいめいき)といってもよい、
この収録の撮影、編集をおこなったのであった。
 
むろん、私がその一人である。
 
岡村美玖(敬称略、仮名)などという
私たちのことを何も知らない人間が
私たちの治療共同体に「管理者」として入ってくる、
ずっと以前のことである。
 
高みから精神医療の世界を「論じる」だけの岡村美玖は、
こうした私たち患者の歴史に
もっと敬意を払うべきであると私は思っている。
 
さて、この1回目の収録の際に
マリナさんははじめて
自分が性風俗嬢だった過去を一部だけ明かした。
 
そのときは、
あまりその詳細に話が分け入るまえに収録が終わった。
 
塞翁先生自身は、
自分がしゃべるのに忙しかったということもあろうが、
マリナさんのことを訊きそびれたというよりも、
続きを語らせるのに、あえて時間を置いたのかもしれない。
 
 
そこで、同年10月、
私をインタビュワーとして
マリナさんの2回目の収録が計画され、
それに先立って塞翁先生は、私に、
 
「今度は、(マリナさんが)
 性風俗嬢をやっていたころの話を
 もっと聞いてみて」
 
と指示を出したのであった。
 
私の4割6割の質問は、この指示にもとづいている。
 
とはいえ、先生の指示が根拠とするものは、
私なりに理解しているつもりであった。
 
がんらい、幼少期に近親から性虐待を受けた人は、
思春期以降に性風俗の仕事につくことが多いといわれている。
 
その場合は、
「お金がなかったから、時給の良い性風俗に…」
と説明されることが圧倒的に多い。
 
たしかに、そういうケースは存在するだろうし、
それが嘘とは言わないが、
すべてがすべて、みんなそうだろうか。
 
そういう理由づけで説明すると、
世間の人に受け容れられやすいからそうするだけ、
という部分もあるのではないか。
 
「生きていくために仕方がなかった」
といえば、人の行動はすべて正当化できるからである。
 
「女性の貧困」
性風俗で働くシングル・マザー」
といった話題がマス・メディアで取り上げられるときには、
 
「私が性風俗で働くようになったのは、
 お金に困っていたからです」
 
という筋書きで報道されるのが
いまや定石のようになってしまっている。
 
とくに、マルクス主義フェミニズムなどの人は、
「性」を説明するのにも「経済」を持ってくる、
 
「お金のために性風俗の仕事をはじめた」
 
という解釈をよろこぶ傾向がある。
 
「そういう女性を生み出した、いまの社会がわるい
 
というところに持っていき、
あとは政治の話にしてしまえばいいからである。
 
政治の話は、不必要とはけっして言わないが、
みんながよくわからないうちに
安易につながりあえるスポーツバーのような側面がある。
 
たとえば、サッカーのワールドカップの開催期間に
盛り場のスポーツバーへ出かけて、
顔に日の丸を塗って、皆に合わせて歓声をあげていれば、
見ず知らずの人とすぐに意気投合し、
その夜のうちにセックスできてしまうなどとよく言われるが、
サッカーも政治も似たような陥穽(かんせい)を持つのである。
 
けれども、性風俗につく女性はほんとうに
みんながみんな、お金に困っているからなのだろうか。
 
他の理由は一つもないのだろうか。
 
幼少期に受けた虐待の
外傷再演という理由を考える余地はないのだろうか。
 
……。
……。
 
かねがね、そのように疑問に思っていたところ、
マリナさんは、1回目の収録のときに、
 
「学費を稼がなくちゃ、というのはただの建前で……」
 
と、けっこう透明に自分の心を振り返って語った。
 
その視線の透明さに、私は魅せられたといってよい。
 
マリナさん自身、こういう語りを露悪的というのだが、
それは一つの知性でもあるように
私は思うのである。
 
「露悪的」というかぎり、
それを「悪」として見ている自分がいる。
 
こういう自分を持てる人の証言は、たいへん価値がある。
そこで、
 
「ぜひ、あなたの性風俗嬢時代を語ってください」
 
ということになったのである。
 
 
 
・・・「長男の放逐(79)」へつづく

vosot.hatenablog.com

  •            

    ありがとうございます。漸く全体像が把握できてきました(^^)v 削除

    och*yom*d* ]

    2016/1/4(月) 午前 10:19

    返信する
  •            

    och*yom*d* さま 早々にコメントをどうもありがとうございます。

    人はだれでも、その頭のなかにいろいろなことを考えているものだと思いますが、その全体像を他者にわかるように言葉にするというのは、たいへん時間のかかることですね。とくに私のような、振ればカラカラと音がするような頭の持ち主にとってはなおさらです。 削除

    チームぼそっと

    2016/1/4(月) 午前 10:24

 

All Right Reserved (C)VOSOT 2013-2020