VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

被災地の内と外(15)愚痴の効能 井上晴美論

 「被災地の内と外(14)」からのつづき・・・

by ぼそっと池井多

 

 

「愚痴りたいのはお前だけではない」
 
熊本地震で被災したタレントの井上晴美さんは、
ネット上でそのように批判されたために
ブログを休止することにしたのだという(*1)
 
*1.産経ニュース 2016.4.18 17:34
 
 
「愚痴りたいのはお前だけではない」
 
などという批判が
大手をふって社会にまかりとおるようになったら、
まっさきに攻撃されるのは、
このぼそっとプロジェクトのようなブログかもしれない。
 
私たちはトラウマから生き延びた者の
「生の声」を発信しているわけだが、
ある眼を持たない人々からみれば、
このようなものは、
ただの「愚痴」の羅列(られつ)にしか見えないであろう。
 
そして、そういう人々は、
自分の中に同じような記憶があるのに眼をそむけて
こう言うかもしれない。
 
「愚痴りたいのはお前だけではない」
 
と。
 
……。
 
 
これは裏返せば、
 
「私だって愚痴りたいのよ」
 
ということである。
 
 
「ならば、愚痴ればいいでしょう」
 
と私は言うだろう。
 
井上晴美さんがブログに書いて問題になったようなこと(*2)
私はまったく「愚痴」には分類せず、
貴重な「被災地情報」の一端だと考えるが、
そもそも「ネット上で愚痴る」とは、
感情を他人にもわかる言葉にすることである。
 
*2.井上晴美ブログ Vida Simple 
2016年4月18日「これから
 
これは、まだやったことのない方は
実際にやってみるとわかると思うが、
はたからバカにしているほど たやすいことではない(*3)
 
*3.とくに私たちのように
精神科の患者という身分であると、
治療者からの弾圧を受けながらおこなうのは、
よけい「たやすいことではない」。
 
しかし、言葉にして出すことによって
多くの犠牲が免れるのだ。
 
暴力がふるわれなくて済むかもしれない。
依存症にならなくて済むかもしれない。
 
極端な例を出せば、
無差別殺傷事件が起こらなくて済むかもしれないのだ。
 
これだけ社会資本のお世話になって生きている
私が言えた義理ではないかもしれないが、
言葉にして出すことで
社会的コストがたいへん安くあがるのである。
 
 
言葉にする」ことには、
それだけの効能がある
 
井上晴美さんという人も、
言葉にして出しているのだから、
それでいいじゃないか。
 
誰が損をするものでもないし。
 
いやなら、読み飛ばせばいい。
 
井上さんも井上さんで、
 
「愚痴りたいのはお前だけではない」
 
などと批判されたからといって、
わざわざ「これで発信やめます」などと
書くことはない。
 
そんなの、ほうっておけばいいですよ。
 
避難生活も大変でしょうから。
 
でもね、被災地からの個人の発信というのは、
ほんと、ありがたいものなのです。
 
私たち、被災地の外の人間に
気前よく、ただで
見えない世界を教えてくれているわけだから。
 
 
 
・・・「被災地の内と外(16)」へつづく
 
 
  •          

    ぼそっとさん今晩は
    本日はコメント頂き有り難うございましたm(__)m

    井上晴美は中々可愛い小娘だったのでよく憶えていますが暫く見ないと思っていたらこんな事になり大変残念です。

    私の同級生の女性は神戸で一瞬にして火災で一切を失いました。
    写真一枚さえも持ち出せずにです。

    まだ携帯も普及していなかった頃ですから、彼女は毎晩公衆電話で友達に連絡をいれるのですが、泣くばかりで掛ける言葉も見つからないのです。

    正直、一瞬で家を失った人の心境には想像が行き着きません。

    井上晴美も泣き叫びたいでしょうね。

    でも井上晴美は結構打たれ強かったイメージがあるのできっと立ち直るでしょう。

    今、余りに下らん連中のおかげで人間不信に陥るネット社会とは、弱い人間には脅威でしかないように思えます。
    m(__)m 削除

    aka***** ]

     

    2016/4/19(火) 午後 11:39

     返信する
  •          

    aka***** さま コメントをどうもありがとうございます。
    そうそう、阪神淡路のときは、まだ携帯が発達していなかったのですよね。
    あなたの御記事「貧するクレーム社会」は、毎日放送山中真アナウンサーの弁当写真ツイート事件を扱ったものとお見受けしますが、じつに先の先まで展開を考えておられ、すばらしい御記事だと思いました。もっと固有名詞入りでバンバン出してやれば多くの人からアクセスされるのでは、とも。
    私もその題材で一記事書きたいと思っていたのですが、あなたにすべてを言い尽くされている感じもして、いまさら私如きが書くこともないと筆を擱きました。 削除

    チームぼそっと

     

    2016/4/20(水) 午前 8:17

     返信する
  •          

    井上晴美さんは、実は私はあまり好きなタレントさんではありませんでした。

    しかし、今回のツイートを売名行為だとは少しも思いませんでした。実家だか自宅が被災しているのです。そんなことをしている余裕はないでしょう。

    むしろ私は彼女が述べた「静かです。私の泣き叫ぶ声以外は何も聞こえない」とか「泣くのは子供たちが寝静まった夜だけにしよう」とか、体験したものにしか語ることの出来ない生々しい言葉が綴られ、テレビでは綺麗なだけで、どんなことを語っていたかも覚えていない人の確かな言葉に接し、不幸や苦難が人を覚醒させるのだなあと、感慨深く報道を見ておりました。

    肉親が事件に巻き込まれ、その被害者家族として、被害者の会などの活動をして行く中で、その方たちが、哲学者のような風貌と言葉を獲得して行くのを目にすることがあります。地下鉄サリン事件の被害者の駅員の奥さんとか、横田恵さん誘拐拉致事件の御両親とかです。 削除

    痴陶人 ]

     

    2016/4/20(水) 午前 9:16

     返信する
  •          

    たまたま横田夫妻は、私と最寄り駅を一にしており、地方講演にでも行かれるのでしょう、早朝のガラガラの車中で何度かお見掛けしたことがありますが、何もなければ普通のお爺ちゃんお婆ちゃんになっていただろう御夫婦の哀しいほど凛とした佇まいに、胸を打たれました。

    それゆえ井上晴美さんがバッシングされることは、憐れまれるはずの被害者が、逆に虐められる現象の一例にも思えました。削除

    痴陶人 ]

     

    2016/4/20(水) 午前 9:17

     返信する
  •          

    nig***** さま コメントをどうもありがとうございます。
    私も同様です。じつは井上晴美さんは、私もタレントとしてぜんぜん「美人」だとか思いません。しかし、彼女は「生の声」を社会に発することができた、そこを私も評価します。
    横田夫妻をよくお見掛けするのですね。サリン事件被害者の会の代表高橋シズヱさんも、ご夫君があのように悲惨な亡くなり方をしたことによって立ち上がり、言っちゃなんですけど「そのへんのオバちゃん」から大学教授のような方になられました。そのように苦難を糧にして成長できる方を、私も尊敬します。そして私たちも成育歴その他の苦難があるはずなのです…。 削除

    チームぼそっと

     

    2016/4/20(水) 午前 9:34

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