VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

鬱である人・鬱でない人(12)「やることがない」オバマ大統領の憂鬱

鬱である人・鬱でない人(11)」からのつづき・・・
by ぼそっと池井多
 
 
大統領が終わったら、
やることがない。
 
 
そんな自虐ネタを映像作品にしたオバマ大統領(*1)

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BBC News JAPAN
 
 
出てくる登場人物は、みんな本物だから面白い。
演技力も、なかなかのものだと思う。
 
先達として、ビル・クリントンが大統領をやめる直前に
同じような映像作品を作っていた。
 
 
それだけアメリカ大統領という役職は、
現代の社会で最高のポストと考えられていて、
満期を務めあげて辞めるときには
「これ以上、何をすれば」
と人は思うものなのだろう。
 
じっさいには、テロ対策も気が抜けないし、
退任後も回顧録の執筆、財団の設立など
やることはいろいろあるはずだが、
「これ以上、やることはない」
と言った方が説得力を持つのである。
 
私のように、社会の底辺で
「何もしていない」者からみれば、
まさに対極の人生である。
 
私は、社会的には「何もしていない」わけだが、
しかし自分的には「やること満載」なのである。
 
目の前には、やらなくてはならないことが
あまりにも山積みになっていて、
それで身動きが取れず、動けない。
 
動けないから、一日のうち3分の2ぐらいは寝てすごす。
 
この状態を「鬱である人」というのだろう。
 
目の前に山積みとなった「やるべきこと」は
たいていが奪われた何かを取り戻す作業、
冤罪を晴らす作業である。
 
他人からみれば「どうでもいいこと」だろうが、
本人にしてみれば、どうでもよくないことなのである。
 
「どうでもよくない」と考えるのが、
自分一人しかいないので、
どうしても人任せにできず、自分がやることになる。
 
 
……。
……。
 
 
私は思い出す。
 
私は、東日本大震災の被災地支援で
いっしょに活動していた丹羽さんに
こう言われたものだ。
 
「池井多さんは、いつも前へ前へと出ていく」
 
この言葉は、まことに勉強になった。
 
私としては、被災地の状況が刻々と変化して、
向こうから「やるべきこと」がつぎつぎ押し寄せてくるので、
私は仕方なくそれに対処しているだけだったからだ。
 
それが、冷静に私を客観していた丹羽さんには
私が自分から前へ前へと出ているように映っていたのだ。……
 
この些細な一件が語るものは大きい。
 
 
 
 
 
 
大統領を終えたバラク・オバマ氏には、
やらなくてはならないことは、ない。
 
一個人としては何かあるかもしれないが、
社会的には、もうない。
 
人間として、大統領を務めあげるほど能力があった。
それは、いまだまったく衰えていない。
だから、やる力がまだありあまっている。
それで、やることを探している。
 
この状態は「鬱でない人」にちがいない。
 
「やることを探している」人生というものが、
まるで砂漠の地平線に浮かぶ悠久のオアシスの生活のように、
私には優雅に、…いや、贅奢に聞こえる。
 
 
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