VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

治療者と患者(130)「忖度」をめぐって

治療者と患者(129)」からのつづき・・・
by ぼそっと池井多
 
いま世界的に取り沙汰されている日本語が
忖度(そんたく)」である。
 
いうまでもなく、森友学園への国有地売却をめぐる問題で
理事長の籠池氏が3月23日の国会での証人喚問のあと
日本外国特派員協会で記者会見にのぞみ、
そこで発したひと言から来ている。
 
曰く、
 
「口利きはしていない。忖度をしたということでしょう」
 
今が3月だからまだわからないが、
もしこれが9月ぐらいに起こっていれば、
まちがいなく「忖度」は今年の流行語大賞になるだろう。
 
籠池氏のこのひと言が非常に日本的なところは、
主語が略されている、という点である。
 
文脈から考えるに、
 
安倍首相(か、あるいは昭恵夫人、口利きはしてない。
 
・安倍首相の側近は、忖度をしたということでしょう。
 
と、主語がおぎなえるのではないだろうか。
 
となると、話者は、
前と後の文章ではびみょうに主語を違えているのである。
 
日本外国特派員協会であるから、
聴衆のほとんどが英語人である。
 
英語の通訳は、はじめこう訳したのだという。(*1)
 
I believe that perhaps Prime Minister Abe or his wife were reading between the lines, that there was a mutual understanding between us.
 
 
これを逆に日本語に訳せば、こうなるだろう。
 
私は、安倍首相か昭恵夫人が、
私たちの間には共通の理解があるということを、
言葉に出さないまま読んだ、と信じる。
 
いわゆる「空気を読む」というやつである。
 
通訳が訳した英語のなかでは
当初、話者である籠池氏が日本語で意味したであろう
「2つの主語」は変質し、
 
 Prime Minister Abe or his wife 
 
というかたちに一本化されている。
 
これで、さらにわからなくなっただろう。
そこでニューヨーク・タイムズの記者がつっこんだらしい。
 
「もうちょっとはっきり答えてください。
安倍首相は直接に口利きしたのでしょうか?」
 
それに対して籠池氏、
 
「安倍首相は口利きしてないでしょ。
忖度したということです」(*1)
 
*1.前出
 
ここでも、「忖度した」の主語は略されている。
 
通訳はこうであった。
 
I don’t think there is direct influence from Prime Minister Abe.

I think that he, that there was a, “surmise,” he read between the lines about what, there was a… Excuse me.
 
この通訳は、あまり上手とは思えない。
私だったら、こう訳すだろう。
I don't think Prime Minister Abe mentioned it directly.
I mean, there was an unspoken mutual understanding.
 
まあ、これは「同時(通訳)」という切迫感がないから
訳せることかもしれないが。
 
 
さてここで、
籠池氏の補佐人である山口弁護士が横から英語でこう発言した。
 
I think he is missing a couple of words, what he is trying to say is, when he said he was doing “sontaku”, that something done by people around him, and not by Abe. “Sontaku” is not a word that you use by yourself. When you say “sontaku,” Abe is probably, people around, or you know, people who are underlings of Abe.

いくつか言葉を欠いているようですが、彼が「忖度」という言葉で表現しようとしたのは、彼によってではなく、彼の周りにいる人々が何らか手を加えたということです。「忖度」というのは自分自身で何かするという時に使われる言葉ではなく、安倍首相の周囲の人間、もしくは子分の人間が何かしたという意味になります。
 
ところが、ここでも
「when he said he was doing "sontaku"...」
などと言っているうちに、
「he(彼)」が、籠池氏と安倍首相、どちらを指すのか混乱している。
 
最初の「he」は籠池氏で、次の「he」は安倍首相を指すのではないか。
 
 
名前を出さない通訳者も、このように付け加えた。
 
Just to add as an interpreter’s note, the word “sontaku” is leading to some confusion in the English translation. There are several different ways to say this; whether it’s “conjecture” or “surmise,” “reading between the lines,” “reading what someone is implying.” So there is not one direct word in English which is what lead to this, just to add some information.

通訳からの情報として付け加えますが、「忖度」という言葉が英語通訳で少々混乱を招いているようです。何通りかの言い方がありますが、「conjecture(推測)」「surmise(推測する)」「reading between the lines(行間を読む)」「reading what someone is implying(誰かが暗示していることを汲み取る)」などがそれに当たります。英語で「忖度」を直接言い換える言葉はありません。念のため申し上げました。
 
なぜ、これほどまでに「忖度」の訳がむずかしいのだろうか。
 
「相手の言っていることを推し量る」といった意味ならば、
中学生でも知っている
「imagine(想像する)」
でじゅうぶん伝わると思うが、
「忖度」という言葉にこめられる、
独特のいやらしさ、重々しさなどが捨象されてしまう。
 
思うに、「忖度」は、
自他境界が確立しておらず、
自分の発する表現に責任を取りたくないけれども欲求を充たしたい、といった未熟な人たちが
保険をかけるために共依存的にやりあっていることの一つである。
 
「ボクちゃん、こう思ってるんだけど、
それをボクちゃんの口からは言えないよ。
だから、言わなくてもわかって」
 
というオウラを発信し、それを受信した者が、
 
「はいはい、わかりました。
じゃあ、言わなくてもやってあげるから、
そのかわり、他のところで利益供与してね」
 
という含みをこめて、
相手が言ってもいないことを実行にうつすのが
「忖度」である。
 
とうぜん、そこには
そういうことをいちいち口に出して言わなくても「わかりあえる」
「信頼関係」と呼ばれるものが成り立っていることが多いが、
裏返せばこの信頼関係は共謀関係なのである。
 
そして、被虐待児は、多くの場合
虐待親のいいたいことを「忖度」して
自らを虐待の餌食に差し出す。
 
 
 
 
 
 
この sontaku をめぐって
 
推測・行間を読む・汲み取る
 
などとさまざまな訳語があてがわれているが、
本ブログのなかで私がしげく使っている類義語が、
自己任命
である。
 
いささか哲学用語じみた、堅苦しい表現だが、
私はその語を、私が属する精神科患者村の
人間たちの行動の動機をあらわす言葉として用いている。
 
たとえば、ぼそっとプロジェクトのリンクを無断で切り、
私という患者を治療共同体から追い出したスタッフ、
ワイエフエフの事業部長、岡村美玖が、
なぜそのようなことをしたかについて、
いまだ説明責任が果たされていない。(*3)
 
*3.「岡村美玖のメール」参照。
 
 
 
岡村の上司にあたる、理事長の塞翁先生は、
 
あれは岡村美玖が勝手にやったこと
 
といって、自らの責任を否定する。
 
ところが、そのわりには、
「岡村美玖が勝手にやったこと」を修正して、
元に戻そうとはしない。
 
「勝手にやった」ままに放置しているのである。
 
ということは、
これはつまり、じつは塞翁先生が
「岡村美玖にやらせていた」ことをうかがわせるものである。
 
裏を返せば、塞翁理事長からの明確な指示がないまま
岡村美玖が塞翁先生の意向を忖度して
リンクを切り、私を追い出したと考えるのが、
いちばん当たっていそうである。
 
岡村が塞翁先生を「忖度して」やったことだから、
塞翁先生は「あれは岡村が勝手にやったこと」と突き放しながらも、心のなかでは
 
「よくやってくれた」
 
と思っているから、
岡村を処罰し、私を職に復するという措置をおこなわないのである。
 
岡村美玖はたいへん裕福な女性であり、
豪壮な一戸建てに住み、
私のような生活保護の貧困者を職をうばわなければならない
経済的な理由は何もない。
 
貧困者の職をうばい、
日本の格差社会の拡大に直接に貢献しておいて、
そのじつ市民としての表の生活では
「反貧困」
などと、社会正義らしく聞こえる運動に
足の小指の先だけつけたりしているのである。
 
そうすることで、自分の本性をよそおっている。
 
あまり深くかかわると、
ほんとうに貧困のために尽くさなければならなくなるから、
そこまではしない。
あくまでも足の小指の先にとどめる。
 
一方で岡村美玖は、ラディカル・フェミニストとして、
とにかく男性を敵視し、
仕事ができそうな男性は
自分の職域から根絶やしにしようとする。
 
私たちの患者村で生き残ろうと思ったら、
男性は仕事ができてはいけない。
だからまともな仕事をしないようにする。
それが、塞翁王国の傾頽につながっていくのである。
 
 
 
 
 
 
 
 
私が、治療共同体の機関誌「ザスト通信」に
患者としての声を発表させてもらえないのも、
治療者の側近、上級患者たちが
治療者の意向を忖度して動いている結果だと考えられる。
 
すなわち、彼らの頭のなかには
こういう思考が無意識に流れているのである。
 
塞翁先生は、池井多のような患者の口を黙らせることを、きっと望んでおられる。
 
でも、そういうきたない仕事に、先生はご自分の御手をよごしたくはないだろう。
 
よし。ならば、私がその汚れ役を引き受けてあげる。
 
それで塞翁先生からもっと承認がもらえるならお安い御用だ。
 
もともと池井多なんて、私にとってどうでもいい人間だし、仲間と思ったこともない。
 
池井多に恨まれようとも、私が失うものは何もない。
 
かつてザストの幹部だった池井多も、
ラディカル・フェミニスト岡村美玖に追い出されて以後、
今や何の力もなく、恨まれたところで怖くも何ともない
 
 
……これは忖度という、
外国人に理解しがたい日本人の思考を
スローモーションで示したものだと言ってよいだろう。
 
この「忖度」という行為の裏側には、
 
「そのくらい忖度しろよ」
 
という同調圧力がはたらいている。
 
それが、塞翁療法の治療空間では、
 
忖度しないと、治療関係を断ち切るぞ」
 
という脅迫にもつながっていくであろう。(*4)
 
 
 
やや敷衍していえば、
それだけに塞翁療法は、
リカモリング・アホバイザー講座で教えられているような普遍性はない、
ということでもある。
 
なぜならば、「忖度」という語彙を持たない海外の人たち、
……いわば自他境界のしっかりした、自己の確立した人たちに
塞翁療法はまず効かないからである。
 
それが証拠に、
いままで何人も、私たちの患者村に外国人の患者が来たが、
みな短期間で去っていった。
 
 
 
・・・「治療者と患者(131) 」へつづく
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