VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

性虐待と主体(37)続々・なにサやってんだべ宮城県。壇蜜PR動画事件。プロ女体とプロ男性

性虐待と主体(36)」からのつづき・・・
by ぼそっと池井多
 
 
宮城県が作った、壇蜜主演の観光PR動画の件を
二回にわたって取り上げた。
 
その後、いくつか露わになった不倫騒動によって
早くもこの話題はメディアの表面から消え去ろうとしている。
 
このPR動画について、世論の大半は、
「そんなことに目くじらを立てる必要はない」
というものであった。
 
しかし、一方では、
そのような意見を書きこんでいる人は、
ほとんどが男性であった、
ということも銘記されておくべきだろう。
 
私は、その性的イメージの喚起ゆえに問題視したが、
設定がもつ性的役割(ジェンダー)ゆえに
問題視した女性議員もいた。
 
そしてここに、その延長といえないことはないが、
一味違う意見を見つけた。
 
 
壇蜜出演の、宮城観光PR動画。
話題になった時は、ちゃんと見てなかった。

「何がいけないんだ」
「こんなことでクレームなんて」
「女性の色気は良いこと」

と、女性がSNSに書いていたので、気になって見てみた。

どうしてこんなに悲しい気持ちになる動画なのだろうか、
と思った。

壇蜜はそもそも、ドラマとかに出てくると、
独特な不穏や不安を予期させる。
(役どころじゃなくて、声などが)。

そういう味を持つ壇蜜
静かなトーンで牛タンを一枚ずつしかくれない
というのも不思議な悲しさが増す。

見ていてどんどん、気分が落ちていく動画である。
それは、この動画が
「『プロ女体』と男性達」
で完結した世界観でつくられているからだと思う。

私は、自分がこの世界に含まれない悲しさに凍える。
(*1)
田房永子 2017.07.24
改行は、引用者による。
 
この人は、もしかしたらフェミニストなのかもしれない。
 
私は断じてフェミニストではないが、
それは私の人生において
つねに私を攻撃してきた人たちが
みんなフェミニストを名乗っていたから、
そういう観点を持つようになっただけかもしれないのである。
 
フェミニストというレッテル自体、
どうでもいい、といえば、どうでもいいかもしれない。
 
この田房永子という女性壇蜜PR動画論を読んでいると、
彼女や、彼女に類する多くの女性が味わったであろう、
その動画からの「疎外」が、
だんだん私に伝わってくるのである。
 
田房永子は、こうも書いている。
 
38歳で二人産んで授乳した現在も、
自分の体にギョッとする私の中の基準は
「プロの女体」なのである。

ちょっと前の私の体と比べての変化に
ギョッとしているわけではなくて、
20~30代の(時には10代の)グラビアの女体が、
私の中の基準になっていて、
それとの余りの違いにギョッとしている。

日々、テレビで街中で電車でポスターでネットで、
とにもかくにも女体女体女体、
プロの女体を見せつけられているからである他ならない。
その媒体は男性向けだけに限らない。
(*2)
*2.*1に同じ。
 
つまり、田房永子壇蜜PR動画を見たときにおぼえた反感とは、
私の言葉でパラフレーズすると、
ようするにこういうものなのだろう。
 
きちんと着こなした和服の下に
「プロ女体」を秘めているであろう壇蜜と、
それを想像し、彼女に見惚れている男性たちという
潜在的な観光客だけで織りなしている、
一つの商品広告をとりまく社会空間から、
「プロ女体」には及びもつかない
現実の貧相な肉体をもった自分が疎外されている。

しかし、その商品とは、
どう逆立ちしても自分が買うこともないような
無関係な品物などではなく、
観光という、自分も顧客になるかもしれない何かなのである。

なのに、なぜ疎外されなくてはならないのか。
……と、まあ、そういう疎外なのではあるまいか。
 
女性と「プロ女体」との関係は、
男性にとっては何にあたるか。
 
「プロ男体」と考えると、ピンと来ない。
 
それこそ、フェミニストたちは怒ってしまうことかもしれないが、
女性から見た男性は、
視覚的な肉体だけでなく、
社会的ステイタスや権力など
もっと包括的な存在であろうから、
「プロ女体」に相当する概念は、
プロ男性」となるであろうと思われるのである。
 
 
あるいは孫正義……
 
具体的には誰でもよいが、
男性が男性であることでプロの商品たりうるような
そういう完璧なイメージの男性たちをあおぎみて、
観光へモティベートされる女性たちを見たら、
一人の冴えない貧相な、
現実的な、非プロの男性である私は、
口には出さないだろうけれど、
やはりなんかつまんない。
 
この「なんかつまんない」という感覚が、
田房永子という、どことなくフェミニストっぽい筆者が感じた
疎外感なのではあるまいか。
 
「なんで、あんたたちだけ盛り上がっているのよ。
 私だって宮城県へ観光に行くかもしれないのよ」
 
というような疎外感。
 
田房が、二児を産んだあとの、38歳の
左右の乳房が非対称な
自分の肉体を鏡に映して、
もしため息を漏らすのであれば、
精神科通院、貧困層生活保護受給者の、
55歳の、無職のうつ・ひきこもりの私は、
自分の人生をふりかえって
ため息を漏らさなければならない。
 
しかし、私はふだん
どこかプロ男性と自分は無関係だと思っているきらいがあるので、
じっさいにはそういうため息をもらすことはない。
 
なかには、しきりに「プロ男性」の幻影を
自分へ内在化させることで、
わざわざ自分に劣等感を培養している男性もいる。
 
それはちょうど、
しきりに「プロ女体」の幻影を
自分へ内在化させることで、
わざわざ自分の肉体を劣等感へ漬けこんでいる女性のようなものであろう。
 
 
 
 
 
 
この数字は、
男性が「プロ男性」の幻影を内在化させることで
わざわざ自分に劣等感を培養していることと
けっして無縁ではないと思われる。

f:id:Vosot:20190714230647p:plain

*3.荒川和久による。
東洋経済オンライン 2017.8.10
 
自殺大国ニッポンだけでなく、
全世界的にそういう傾向であるだろうが、
女性より男性、
男性のなかでは既婚男性よりも未婚男性のほうが
自殺率が高い。
 
そのうち日本では、
40代独身男性の高い自殺率がもっとも高い
のだという。
 
昔でいえば「働き盛り」、
(私は、40代もさっぱり働かなかったが)
肉体的にも精神的にも充実としていると思われる
40代の独身男性がもっとも高い自殺率を示すのはなぜか。
 
「ソロ男プロジェクトリーダー」「独身研究家」
という肩書きを名乗る荒川和久は、
それを数々の統計結果から、
 
「理想の男性像」に追い詰められるから
 
と分析する。
 
「理想の男性像」。
私の言葉になおせば、
プロ男性」の像である。
 
病気、貧困、失業などよりも、
「プロ男性」のイメージのほうが、
よほど男性を自殺に追いやっている、
というのである。
 
これは、かなり的確な指摘なのではないだろうか。
 
 
「プロ女体」に追い詰められる女性、
田房永子が38歳で、
「プロ男性」に追い詰められる男性が40代、
というのは、
けっして偶然ではないように思われる。
 
それ以上の年齢層、たとえば50代以降になると、
 
「自分はどうせ、すばらしい女(男)じゃありませんよ」
 
ということが、
意識の深い所で自己認識化していくので、
光り輝く「プロ女体」「プロ男性」の偶像から疎外されても、
30代、40代ほどは深く傷つかないだろう。
 
年齢が、
自分の不完全さを
率先して代弁してくれるからである。
 
いいかえれば、自分のショボさ加減を
年齢のせいにできる。
 
まだ若いと、そうはいかない。
 
「自分がこんなにショボいのは、
 ババア(ジジイ)になっちまったせいだ」
 
とはいえず、
 
「自分がこんなにショボいのは、
 自分がショボいからだ」
 
と直接的に自己存在へ責めの矢が向くのである。
 
 
 
 
 
 
 
いずれにせよ、
宮城県がつくった、くだらない壇蜜PR動画は、
プロ女体・プロ男性という概念へ私を導いてくれた。
 
宮城県がこの動画をつくらなくても、
そういうことを考えるきっかけは
社会に腐るほど転がっているわけだが、
竜宮城ならぬ、そういうところへ導いてくれたということで、
壇蜜宮城県には感謝もしておきたいものである。
 
・・・「性虐待と主体(38)」へつづく
 
 
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    顔アイコン

    プロ女体ましてやプロ男体への関心はありませんが、田原永子さんてどんな人なんだろうと見ると。漫画家でエッセイスト「生まれた時から“しんどい母親”に苦しんで生きてきた。とにかく自分がやりたくもないことを強制される」云々となんだかぼそっとさんに似た境遇なんだなと思いましたが、ご存知でしたか。 削除

    迷えるオッサン

     

    2017/8/12(土) 午前 10:20

     返信する
  •       

    迷えるオッサンさま コメントをどうもありがとうございます。

    いいえ、存じませんでした。

    どうりで、なにやら相通ずる感覚があるというわけですね。

    塞翁先生の「性器の挿入あり/なし」で境界線を引く人間観よりも、よっぽど現実味のある共通性です。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/8/12(土) 午前 11:49

     返信する
  •       

    顔アイコン

    こんばんは。

    「プロ女体」に対して「プロ『男性』」というのがミソですね。(^^♪
    女性は「カラダ」しか注目されないが男性は収入や社会的地位など全体的なものまで求められる…

    しかし、プロ女体の体型の女性が周りにはいないですよね…
    雑誌グラビアで見るような女性は本当に要るのかと思ってしまいます(^-^; 削除

    豚猫大好きぶーにゃん ]

     

    2017/8/14(月) 午後 6:57

     返信する
  •       

    豚猫大好きぶーにゃんさま コメントをどうもありがとうございます。

    そうなのです、「プロ女体」に対して「プロ『男性』」なのがミソなのです。

    雑誌グラビアで見るような女性も、
    AVで見るような性行為も、
    しょせんは抽象絵画と同じく、
    人間のファンタジーを表現したものであり、
    そんなものは「本当は」、
    つまり生活場面には存在しない何かでしょう。

    しかしファンタジーも、
    しょせん人間の社会が生み出したものですよね。

    たとえば、サルやイルカなど高知能な動物でも、
    オスがメスの写真を見て興奮する、
    ということがありません。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/8/14(月) 午後 10:46

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