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性虐待と主体(39)元AV女優・大塚咲の視線~外傷再演と納得

性虐待と主体(38)」からのつづき・・・
#齊藤學被害 #精神医療被害 #精神療法被害
by ぼそっと池井多
 
元AV女優で、
現在は写真家などとして活動する大塚咲は、
15歳の時、英語検定を受けるために学校に向かう途中、
見知らぬ男からレイプされた、という。(*1)
 
元AV女優・大塚咲さんの告白
HuffPost Japan  2017.08.01
 
ナイフを突きつけられ、首を絞められて
「声出したら、殺すよ?」
と笑いながら犯され、
抵抗などできなかったらしい。
 
中高一貫の女子高で、
無邪気に「彼氏との初エッチ」を告白する同級生をうらやましがり、下ネタで盛り上がる日々を送りながらも、
友達と一緒にいても
「仲はいいけど1人ぼっち」な感覚を味わい続けた。
 
レイプされた現場が学校のすぐ近くだったために、
学校という場所がフラッシュバックのきっかけを作っていた。
 
高校2年生の終わりに自主退学をし、
単位制高校に通って高校卒業資格を得たのち、
20歳で彼女は自らすすんでAV女優となる。
 
理由は、
 
「AV業界で一番になることで、
過去に起きたことを納得したかったから」
 
だという。
 
この理由、動機が理解できるかいなか、というのは、
けっこう大きな境界線であると思う。
 
AV女優だったころの彼女の写真を検索すると、
どうも、どれもこれも
「心ここに在らず」
というか、
見ているこちらがゾッとするほど
視線が空虚で茫洋としているように見える。
 
あきらめや蔑み、恨みや怒りといった感情を固化させたまま
服を脱いでいるように見えるのである。
 
 
 
数日前に「性虐待と主体(37)」において、
NHK-Eテレで放送された
ETV特集 告白 満蒙開拓団の女たち」
のなかで、
自分の村が生き残るためにソ連兵へ性接待をしいられた
満州に住んでいた女性たちの証言するときの目が、
とてもしっかりしていた、
ということを書かせていただいた。
 
90歳近くになるその女性たちは
誰もがしっかりと覚悟を肝に据え、
確実に言葉に自分を乗せて、
みずからの過去を語っていた。
 
その視線と、この大塚咲の視線は、
ちょうど対照的、正反対にあたるといってよい。
 
大塚咲の場合は、
視線が実存していないのである。
彼女から、彼女自身が遊離しているように見える。
 
 
 
 
 
 
 
 
みずから進んでAV女優の道へ飛びこんでいった
大塚咲の就職は、
「外傷再演」ではないか、と私は思うのである。
 
もちろん、AV女優というのも立派な職業であるし、
そのへんは私には偏見はないつもりだ。
 
しかし、15歳のときの強姦被害がなければ、
彼女は映像という虚構のなかで、
同じ状況を何回も再現する
AV女優という職業についただろうか。
 
私の主治医、塞翁先生は、
このような離人症的な症状は、
なんとかして近親姦に特有なものということにしてしまいたいらしく、
事実をねじまげてでも、
そういう話ばかりを収集しているようだが、
じっさいは性器の挿入・侵襲の有無や、
加害者が近親者であるかないかを問わずして、
私のいう「主体の剥奪」がおこなわれたときは、
このような後遺症を残しやすいということが、
これで明らかであると思う。
 
もちろん、大塚咲という一人の元AV女優の
商業的な作品をもって、
そういう結論を学術的に導き出すことはできないが、
近親姦びいきの塞翁理論を否定するに足るだけの傍証は、
専門家がその気になれば、
AVや性風俗の業界を中心にすぐ集まるのではないか。
 
 
 
 
 
 
 
 
強姦事件を経てからの大塚咲は、
学校の仲間といっしょにいるときに覚えていた感覚を
「仲はいいけど一人ぼっち」な感覚
と表現する。
 
それは、私のいう「異邦人感覚」に通底する何かである。
 
この違和感を言葉にしようと、
私は人生のほとんどを費やしているといってよい。
 
精神医療につながれば、
それは安易に言葉にできるかと思ったら、
むしろ反対の結果を背負わされることになって
今日に到る。
 
 
私は男性であるし、性器の侵襲こそ受けていないが、
大塚咲のいう「納得できないできごと」は、
精神構造からして、実の母親から日常的に受けていた。
 
そのうちに、私の精神の基底や原型が、
それにもとづいた形で発達してしまった。
 
その結果、私は社会適応できず、
50代の現在もひきこもりとして生きるところに、
かろうじて人生の血路を見いだしているというわけである。
 
しかし、このようなことが
日本を代表する著名な精神科医であったはずの塞翁先生には、
18年かけても理解できなかった。
 
また、へたに著名であったから
「理解できない。教えてくれ」
と言えなかった。
 
性器の挿入のあり、なしで、
機械的に被虐待体験を分類してしまう塞翁先生は、
それに異議を唱え始めた私を
治療共同体に居づらくさせることで、
私が症例を証言する口をふさぎ、
結局、大塚咲のいう「仲はいいけど一人ぼっち」の感覚を
患者である私の中に増幅させることしかできなかった。
 
ひとことで言えば、
外傷再演をふせぐためのはずである
精神医療による外傷再演である。
 
 
 
 
 
 
大塚咲の場合、AV女優というキャリアのなかで
当初めざしていた
「過去に起きたことを納得
ということができたのかどうか、
この記事からはわからない。
 
その後、写真家として
他のAV女優などと撮る側にまわり、
最近のAV強要をめぐる騒動では、
AV業界の存続を支持しているというから、
何かしらのかたちで自分が受けた性暴力被害のことは
納得できたのだろうか。
 
私も、
なぜ母親にあれほど虐待されなければならなかったのか、
なぜせっかくつながった精神医療からも虐待されなければならないのか、
なぜあれほど貢献した治療共同体から悪役に仕立て上げられ追放されなければならないのか、
納得をしたい。
 
納得をしたい。
 
納得をしたい。
 
だから、AV女優になるという大塚咲の捨て身の決断が、
納得がしたかったから」
という理由によるものだったということは、
骨にすりこまれるようにして痛くわかるのである。
 
・・・「性虐待と主体(40)」へつづく
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    顔アイコン

    高2の時のレイプ事件を納得するためにAV業界に入った大塚咲の写真に、ぼそっとさんは「心ここに在らず」のぞっとする視線を感じ、それは「外傷再演」なのではないかと思ったのですね。
    私も興味を持ってAV時代のビデオサンプルを何本か拝見しましたが、「AV業界で一番になって納得する」の言葉通り仕事を楽しんでいる彼女を感じました(好感を持ったと言うことです)。

    突拍子も無い例ですがフーテンの寅さんが甥っ子に垂れる人生訓に「難しい事は、解らないが、人間、生きてゆく中で、一杯、色々な嫌なことがたくさんある。でも、1つや、2つ、その中でも、楽しい、嬉しいことがある。人間は、その為に、生きているんじゃないか??」
    つまり大塚咲もAVの仕事を楽しんだのではないだろうか・でなきゃあ一番なんか絶対無理、つまり納得したのではないでしょうか。
    ぼそっとさんの場合「納得」とは対極の立場に置かれているようですが、私には引きこもりを楽しんでいる姿も重なって見えますが御免なさい。 削除

    迷えるオッサン

     

    2017/8/20(日) 午後 7:25

     返信する
  •       

    迷えるオッサンさま コメントをどうもありがとうございます。

    ひじょうに実証主義的な迷えるオッサンさんならではご姿勢に頭が下がります。

    私は大塚咲さんの映像になった作品を観ていないので、その意味では彼女のAVをじっさいに見た迷えるオッサンさんのほうが判断材料を持っているでしょう。彼女のAV出演は「楽しんでいた」とおっしゃるならば、それはそれとして、私も反論はできません。

    しかし、AV出演にせよひきこもりにせよ「楽しんでいるか否か」の二元論で語ることもできないように思います。
    「もうこのような選択をしている以上、これを楽しむしかない」
    といったような心境というのもあることでしょう。

    「楽しんでいるように見えるから、もう「納得」した」
    と直結させることもできないように思います。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/8/20(日) 午後 11:01

     返信する
  •       

    顔アイコン

    こんばんは。

    大塚咲氏のことは別のウェブサイト記事で見ました。
    lite-ra.com/2017/08/post-3366.html

    大塚氏は「性暴力の本質は『弱い者いじめ』である」と、「一応の結論」を出しているようですね。

    そこで私が思い出すのがHIKIKOMORI当事者の「梅星ノア(仮名)」のことです。私は一時期プライベートでの交流がありました。

    彼、著書「ひきこもりセキララに…(仮名)」という本の中で女性に対する恐怖感、コンプレックスを綴られておられます。
    しかし、その後開設した「梅星さんのブログ」には、小中学生のアイドル、そして性的虐待ビデオ(いわゆるAV)の女優さんのイベントへの追っかけに行ってきたということが「メインコンテンツ」になっています。

    私は思いました。
    「女性は怖いのにこの手の「女性」には執着するのか。そうか、梅星さんは女性は欲しくないが『性奴隷』は欲しいわけか」と。

    アイドルの対象を小中学生に限定しているのも「自立した女性に対する恐怖感」を抱かなくていいからでしょう。

    大塚氏の著書タイトル「よわむし」そのものですね 削除

    豚猫大好きぶーにゃん ]

     

    2017/8/23(水) 午後 9:06

     返信する
  •       

    豚猫大好きぶーにゃんさま コメントをどうもありがとうございます。

    梅星ノアさんという方のことはぞんじませんが、大塚咲さんの「一応の結論」にはうなずけるものがあります。

    私が関心をもっているのは、精神医学的なものでありまして、心的外傷(トラウマ)をうけた者が同じ構造の事件を、あたかも本人が望んでいるかのように進んで体験してしまう「外傷体験」です。

    大塚咲さんも、きっとそれを通過したのだと思います。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/8/24(木) 午前 1:44

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