VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

性虐待と主体(40)バルトゥス『夢見るテレーズ』撤去要求事件

性虐待と主体(39)」からのつづき・・・
by ぼそっと池井多
 
最近、千葉市のコンビニで
成人雑誌(要するにエロ本)を置かないようにした、
というニュースがあった。
 
私自身は、その業界については
ついぞ良き消費者になったことがないが、
それはそれでリーズナブルな決定であったように思った。
 
買う人は、コンビニでなくても買いに行くであろうからである。
 
ところが、その問題と同列に語る気にならないのが、
こちらである。

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パブロ・ピカソをして20世紀最後の巨匠といわしめた
フランスの画家バルトゥスの作品『夢見るテレーズ』について、
ニューヨーク市民たちが児童性虐待を助長するという理由で
メトロポリタン美術館からの撤去を求めている。(*1)
 
 
 
抗議の声を挙げ始めたのはミア・メリルという30歳の女性。
 
「この絵は、
子どもを性の対象とすることを美化しようとしている」
 
と主張している。(*2)
 
わざわざそういうふうに視ようとすれば
視られないこともないが、かなり無理がある。
性への連想は、
最初に目に入ってくる第一印象ではない、
と思うのである。
 
私がこの絵に観るものは、
元気な子どもにとっては、まだ少し汗ばむ季節に
無邪気さの残る少女が
放恣にくつろいでいる姿である。
 
眠っているわけではないことは、
手が頭に乗っていることからわかる。
 
でも、目を伏せているのは
今日の楽しかったことを
思い返しているのかもしれない。
 
私自身が幼いころに、
親戚の子がこんなふうにしている風景を見たような気もするが、
考えてみれば、日本の部屋はこんなに広くないから、
それは絵画が喚起するイメージかもしれない。
 
いずれにせよ、この作品から呼び起こされるイメージは、
性虐待・性暴力とはまったく関係のない何かである。
 
なるほど、少女の下着が見えているが、
それは少女がまだ礼儀を気にすることもないほど
幼さを宿している証であり、
幼いからといって
すぐさま男性の性慾の対象になるわけではあるまい。
 
というか、よほどそういう性癖や病理をもった者以外、
ふつうは子どもに
性慾をおぼえたりしないものではないのだろうか。
 
 
ところが、これを
メトロポリタン美術館から撤去せよと訴えている
ミア・メリルは
(原文が文法的に正しくないので意訳すると)
このようなことを言っている。
 
 
昨今、日増しに高まる性暴力や、その告発の潮流を考えると、いかなるフィルターもかけずにこの作品を一般市民向けに陳列するとは、メトロポリタン美術館はおそらく意図的に、子どもを性の対象と化し、盗み見することを支持しているといわなくてはならない。
 
女性の身の安全と健康を考えると、美術館の作品コレクションがどうとかいう問題は、小さな問題である。
 
こんなおかしな意見が
一般市民に相手にされるわけがないと思いきや、
またたくまに賛同を集めているのである。
 
11000人の署名をあつめることを目指しているが、
すでに10170人あつまっており、
達成は目前である。(日本時間 12月7日 14:00)(*2)
 
 
こうした風潮が激化すれば、
たとえば20世紀アメリカ文学の最高傑作の一つといわれている
ナボコフ『ロリータ』を全米図書館から撤去せよ」
とか、
幼児性慾についての研究が載っている
フロイト全集を焚書せよ」
といった声があがるのも、
時間の問題かもしれない。
 
私の通う精神科医療機関で、
性虐待をめぐって患者待遇のあいだに著しい偏重があることとも
かなりの部分、重なって見える。
 

19:52 追記
 
賛同をあつめている、そのサイト(*3)に
こう書き込みました。
 

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<拙訳>
 
これは馬鹿げています。
私は、この絵画が性的なものだとは思いません。
たとえ、あなたがそれを性的なものだと感じても、
それはあなた個人の感覚です。
 
もしこの風潮が進むならば、
20世紀アメリカ文学の重要な作品の一つ
ナボコフ『ロリータ』は図書館から撤去され、
幼児性慾についての研究が載っている
S.フロイト全集を焚書せよということになるでしょう。
 
あなたは美術館を訪ねた時、
一つ一つの作品に関して、
観る観ない、という自由があるのです。
 
あなたは、ある作品を観ないで
そこからただ歩き去ることも自由です。
 
作品を撤去することは、
美術館を訪れた他の人たちから
その作品を観る自由を奪い去ることなのです。
 
・・・「性虐待と主体(41)」へつづく
 
  •       

    個人的には「性の芽生え」を描いた絵のように感じました。
    昨今は規制が厳しすぎて弊害も多いです。 削除

    ジュピター *☆*

     

    2017/12/7(木) 午後 2:40

     返信する
  •       

    ジュピター *☆*さま コメントをどうもありがとうございます。

    そうですか。
    私は「おく手」に育ったせいか、この絵のどこが「性の芽生え」なのか、さっぱりわかりません。

    どうりで小学校でも図画工作の成績は悪かったです。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/12/7(木) 午後 3:14

     返信する
  •       

    バカげてますね^_^;私はこれのどこが性をイメージしてるのか全く持って分かりません。 削除

    myd*7 ]

     

    2017/12/8(金) 午前 0:13

     返信する
  •       

    myd*7さま コメントをどうもありがとうございます。

    そうでしょう?

    こんな芸術作品を「エロだ」ということで美術館から撤去しなくてはならないのなら、世界中の美術館や博物館や図書館は空っぽになってしまいます。

    なのに、そのサイトには、
    「これは小児性愛だ。撤去しろ」
    という意見ばかりがひしめいているのです。

    私は、アメリカはもう終わりだと思いました。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/12/8(金) 午前 10:47

     返信する
  •       

    顔アイコン

    トランプ大統領を選んだ国ですから少し心配ですね。 削除

    迷えるオッサン

     

    2017/12/8(金) 午後 6:03

     返信する
  •       

    迷えるオッサンさま コメントをどうもありがとうございます。

    そうなのです、
    まさに「トランプ大統領を選んだ」ノリで、
    この件も進んでいるのです。

    反知性主義というか、何というか。

    ある種、50年前の文化大革命をも彷彿とさせます。

    しかし、これも対岸の火事とは
    あまり言っていられなくなるのではないでしょうか。 削除

    チームぼそっと

     

    2017/12/8(金) 午後 7:08

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