VOSOT ぼそっとプロジェクト

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貧困と人づきあい(60)吉岡里帆主演ドラマ「ケンカツ 健康で文化的な最低限度の生活」に想う

貧困と人づきあい(59)」からのつづき・・・

by ぼそっと池井多

 

 

関西テレビ制作、生活保護を題材とした連続ドラマ、
 
健康で文化的な最低限度の生活」(*1)
 
が話題を呼んでいる。
 

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これまで生活保護をあつかうドラマは、
どことなくタブーにされていたが、
明朗なグラビア・アイドルをヒロインとして、
メジャーに大々的にドラマ化し
その領域を真正面から取り上げようとしている意欲作である。
 
私も生活保護を受けている当事者であるので、
大きな関心をもって見ている。
 
今まで
 
「どうしようもないクズ人間どもの吹き溜まり」
 
のように思われていた生活保護受給者の世界が、
 
「なんだ。私たち一般市民と同じじゃん」
 
という目で見てもらえるなど、
このドラマの効用も大きいようである。
 
一方では、
 
「健康で文化的な最低限度の生活」
 
という日本国憲法第25条の条文の一部は、
私たちのような受給者には昔からおなじみのフレーズだったが、
このドラマのタイトルのように
ケンカツ」などと略されてしまうと
 
 
なんでもかんでも省略すればいいもんじゃないよ!
 
 
という違和感をおぼえないでもない。
 
コンカツ、シュウカツ
などと何でも「…カツ」でまとめるようになったのは、
動」
の意味から来ているわけであって、
「生
から「カツ」を持っていくのは邪道という気がする。
 
「軽くする」ために無理な省略しているのだろうが、
やはり私は「重く」考えているのである。
 
つねに、考えている。
 
「健康で」+「文化的な」+「最低限度の」
 
という3条件がそろった生活とは何か、ということを。
 
 
また、これは
地上波による民放ドラマだから仕方ないのかもしれないが、
だいぶ現実とちがうところもある。
 
まず第一に、受給者が住んでいるところは、
このドラマに出てくるような良い住居ばかりではない。
たとえば、私が住むアパートは、
もっとボロボロである。
 
第二に、福祉事務所のケースワーカーは、
あんなに若くてきれいな女性ばかりではない。
ときどき、いらっしゃるが。)
 
もっと「ふつうの女性」をキャスティングすべきであった。

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第三に、ケースワーカーの皆さんは、
一人で110件以上受け持っているそうなので、
あんなに一つの案件にかかりきりになれるほど
暇ではない。
 
第四に、行政(ケースワーカー)と受給者は、
街中ですれちがっても、お互い挨拶などしない。
 
ドラマの中では、道や店ですれちがったときに、
ケースワーカーが気安く受給者に声をかけているが、
あんなことをしたら
個人情報保護法違反に問われる。
 
第五に、これは第四の延長なのだが、
ドラマでは、ケースワーカーが受給者宅を訪問したときに、
 
「東区役所から参りました、○○です」
 
などと玄関の外で大声で名乗っているが、
あれもありえない。
 
受給者の側は、受給している事実が近所に知られることを
極度に恐れている。
 
行政もそれはわかっているから、
行政だとわからないように訪問しているはずである。
 
 
 
 
 
 
 
 
そんなこんなの「改良点」はいくらでも見つかるが、
それはあくまでも「欲を言えば」の話であって、
これまで闇に埋もれていた領域を
地上波にのせてくれた功績は大きい。
 
最近では第7話(CASE 7)に出てきた
 
「働きたくない男」
 
の話が、痛いくらいに染み入ってきた。
 
人から見れば、
「ただ怠けているだけに見える」
中年男の話である。
 
いくら就労指導しても、働こうとしない。
 
そのうちに、その男特有の
「働けない理由」
があることがわかってきた。
 
この男の場合は識字障害である。
 
しかし、それをいえば、
「字も読めないのか」
とバカにされることを恐れ、
男はずっと言えないできたのであった。
 
外見的には「ふつうに見える」ために、
「ただ怠けているだけ」
と他者からも行政からも誤解されていた、
という話である。
 
私の場合、識字障害ではないが、
同じように「他人から見えない、働けない理由」があるために
このエピソードは深く身に刺さってきたわけである。
 
このシリーズでは、次回もこの連続ドラマ
「健康で文化的な最低限度の生活」
を取り上げることにする。
 
 
 
#ケンカツ #健康で文化的な最低限度の生活
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    興味が出て今週分を録画して観ましたが、やはり演出が鼻について最初の方しか観れませんでした。
    何で登場人物があんなに単純なのでしょう。まるで整数しか出てこない算数のような。人間には、もっと割り切れない、言葉にならない感情があると思うのですが、そこが切り落とされ、まるでロボットのようです。 削除

    aon*_*85 ]

     

    2018/9/6(木) 午後 9:14

     返信する
  •      

    aon*_*85さま コメントをどうもありがとうございます。

    整数しか出てこない算数ですか、すばらしい比喩ですね。

    やはり地上波の連ドラという制約はあるでしょうね。

    ただし、今週の放送は後半、ずいぶん脚本も主人公もがんばった感がありましたよ。とくに川の中のシーンとか…。

    それでも、やはり現実のケースはあれほど単純ではないことは確かですね。 削除

    チームぼそっと

     

    2018/9/6(木) 午後 10:08

     返信する
  •      

    顔アイコン

    ご返信をありがとうございます。
    そうでしたか。最後はそれなりに良かったのですね。次週は辛抱して最後まで見てみます。
    ところで、今週は大阪の台風といい、北海道の地震といい、引きこもっている方にも大変な災害が発生して、何とも言えません。
    普通の人でも大変な問題なのに。
    表面的な混乱は1か月もたてば治まるのでしょうが、その先からの長い時間が、解決しない問題と一緒に過ごす時間が、本当の苦しみなのかもしれません。 削除

    aon*_*85 ]

      

    2018/9/6(木) 午後 11:14

 

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