VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

外国のうつ・ひきこもり事情(101)バングラデシュのひきこもり<1>

 

私は、
 
「ひきこもりは、はたして経済的余剰の産物か」
 
という問いを持ち続けてきた。
 
ひきこもり当事者として、
 
「先進国で裕福だから、お前たちはひきこもれるのだ」
 
という言説をくらうことが多いからである。
 
先進国で裕福でなくても、
人はひきこもりになるのではないか。
 
ただ、裕福でない国のひきこもりは、
メディアが注目も報道もしないから、
いないことになっているだけではないのか。
 
そんな仮説をながらく持ってきたのである。
 
2017年12月にGHO(世界ひきこもり機構)を作らせていただいたことが、これらの仮説を実証するのに、
大きく一歩近づいた。
 
昨年は、先進国ではない国々のひきこもりとして、
アルゼンチンのマルコ・アントニオ、(*1)
フィリピンのCJ
などを紹介させていただいた。
 
*1.「外国のうつ・ひきこもり事情(80)」
 
*2.「外国のうつ・ひきこもり事情(91)」
 
そして年が明けてバングラデシュイッポをご紹介する。
 
バングラデシュとは、大国インドの東にある
比較的に小さな国で面積は日本の4割ほど、
イスラム教徒が9割近くを占める。

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バングラデシュは、世界最貧国のうちの一つである。
 
一人当たりのGDPは904ドル。
世界平均の1割にも届いていない数字である。(*3)
 
1日2ドル未満で暮らす貧困層
国民の75%を超えている。(*4)
 
*3.IMF, 2013年
 
バングラデシュが位置する巨大なデルタ地域は、
歴史をさかのぼると、
過去に「黄金のベンガル」と言われていた時代もあった。
 
膨大な人口と労働力を持っていることから
潜在的な経済力は高いが、
洪水などの自然災害や不安定な政情で、
現在では最貧国の一つに数えられているわけである。
 
イスラム過激派も活動している。
 
2016年7月1日に発生し、
JICAの調査業務に従事されていた日本人7名が殺された、
ダッカ襲撃事件は、いまだ日本人に耳に新しい。
 
いっぽうでは、貧困層を対象とした
グラミン銀行で世界的に有名になった国でもある。

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こんにちの世界の若いひきこもりのご多分に漏れず
イッポも日本のマンガやアニメのオタクである。
 
彼の名も、
おそらくそれらの登場人物のどれかから取ったのだろう。
 

 
 
ぼそっと池井多 バングラデシュのひきこもりとして、
 最初に君にインタビューできることを
 私はとても光栄に思っている。
 
 君が住んでいるのはダッカのような都市部かな。
 
イッポ そうだよ。ダッカに住んでる。
 でも、どうしてダッカだとすぐにわかったの。
 
ぼそっと池井多 わかったってほどでもないさ。
 私はきみの国の都市の名前としたら、
 ダッカチッタゴンぐらいしか知らないから、
 当てずっぽうに言ってみただけさ。
 
イッポ なるほど。
 
ぼそっと池井多 どのくらいひきこもっているの。
 そして、きみは今いくつ。
 
イッポ ぼくは18歳でひきこもりが始まった。
 そして2018年8月現在、もうすぐ26歳になろうとしている。
 
 でも、なんとかひきこもりを脱しようと悪戦苦闘してるんだ。
 
ぼそっと池井多 わかった。
 きみの周りには、同じくひきこもりである友達はいるかい。
 
 きみの国には、ひきこもりの集まりやネットワークはあるかい。
 
イッポ 同じくひきこもりの友達はいるよ。
 フェイスブック上であなたとお友達になるといい、
 って教えてくれたのが、
 ぼくと同じくバングラデシュのひきこもり仲間だ。
 
 彼がぼくをGHO(*5)に紹介してくれた。
 
*5.GHO(Global Hikikomori Organization)
世界ひきこもり機構
 
ぼそっと池井多 あ、わかった。
 ここで個人名を出すわけにはいかないけど、
 彼のことはよく知っているよ。
 
 でも、彼もバングラデシュのひきこもりなのかい。
 
イッポ そうだよ。
 
ぼそっと池井多 それは気づかなかった。
 
 なぜって、彼の名前は
 なにか私の読めない文字で書かれていたから。
 
イッポ ああ、なるほどね。
 あれはベンガル文字だ。
 ぼくたちの国語。
 
 彼はインターネット上でもベンガル文字で名前を書いている。

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イッポ でも彼はいい奴だよ。(*6
 
ぼそっと池井多 それは知ってるよ。 彼はいい奴だ。
 
*6. なぜここでイッポが唐突に、
「彼をいい奴」と言ったのかわからない。
私の口調が侮蔑的だったのか、
とあとで少し悩んだ。
うつ病の私。
 
 
 ところで、きみがプロフィールに掲げている名前
  Ippo Makunouchi 
 というのも私は好きだなあ。(*7)
 
 きみはそれを、
 何か日本のキャラクターから取ったのだろうか。
 
 Kanji と呼ばれる私たちの文字では、
 きみの名前は「幕ノ内一歩」と書くのだ。
 
イッポ へえ、そうなんだ。
 カンジ、ぜんぜん読めないや。
 
 あなたがぼくらのベンガル文字を読めないように。
 
ぼそっと池井多 まさにそのとおり。
 
 
*7.彼の本名は、
いかにもイスラム教徒の男性らしい名前である。
 
 
 
 
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    NHKで昨年話題になった『サピエンス全史』の解説TV番組が放映されていました。
    そこでは、ホモサピエンスの最大の特徴として「現実には存在しないフィクションを信ずることができ、それを仲間と共有できること」とありました。
    これが、個人の体力で上回るネアンデルタール人(=フィクションを信じない)を、集団の力で絶滅に追い込んだ原動力とのことです。
    そして、その「フィクション」が、「宗教」、「貨幣」、「帝国」の3つの形として共有されて集団を統合し、グローバルにホモサピエンスをまとめる力となったとのことでした。

    さて、このことを念頭にして考えたのですが、「ひきこもり」とは何なのか。

    実は「ひきこもり」とは、この3つのフィクションを信じられなくなった人たちなのではないでしょうか。

    「帝国」≒「会社、学校」とした場合、この3つのどれかを信じている人は、自分を「ひきこもり」と自称しないのではないでしょうか。

    GHOのように全世界でひきこもりが増加しているのだとしたら、このフィクションを信じられない人が増加しているのかもしれません。 削除

    aon*_*85 ]

     

    2019/1/8(火) 午前 0:34

     返信する
  •   

    aon*_*85さま コメントをどうもありがとうございます。

    たしかに、たとえば資本主義社会というのは、信用創造という大きなフィクションから成り立っていますよね。
    宗教にしても、帝国主義にしても、膨大なフィクションです。

    私の仮説では、そうしたフィクションによって利得をえられない者が、なんらかの意味で、私のいう「反市民」になり、それの一つの形態がひきこもりなのではないか、と思います。

    利得をえられないのだから、それを信じる側にも与しないわけです。

    「ひきこもり」という自称も、おそらく時代とともに他のものに推移していくのではないかと思います。 削除

    チームぼそっと

     

    2019/1/8(火) 午前 10:05

 

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