VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

いきなり年頃の娘の父になった私(58)娘の近所に住んでいた青年<3>ジェンダーで悩んでひきこもりぎみに

いきなり年頃の娘の父になった私(57)

娘の近所に住んでいた青年<2>

日本で初めてのイタリア人精神科医の誕生か」からのつづき・・・

 Edited by ぼそっと池井多

 

f:id:Vosot:20190802215332p:plain

フランの故郷ニッツァ・ディ・シチリアの隣町タオルミナ

シチリアの文化風土で孤立する

ぼそっと池井多  フランさんもシチリアに里帰りしたときに、

シチリアのひきこもりの調査とか手がけたことはありますか。

フラン  それはまだないんですが、

ぼく自身がシチリアに住んでいたころ、

ひきこもりがちな生活をしていたんです。

ぼそっと池井多  へえ、そうだったのですか!

どういう状態だったのか、

もっと詳しく教えていただけませんか。

フラン  シチリアには大都会がなくて、

みんなが同じ考え方で生きていますから、

彼らと同じような生活の仕方をしないと、

たちまち孤立してしまうのです。

 

同調圧力が高いのですね。

シチリアでは生き方の多様性が公に認められていません。

 

家族の中では父親の権力が強く、

男性はこうあるべき、女性はこうあるべき、

という社会的規定が強いです。

 

イタリアでは南へ行くほどそういう傾向がありますが、

何といってもシチリアはいちばん南ですからね。

ぼそっと池井多  ひと世代も前になりますが、

ゴッドファーザー」という映画がありました。

日本では、こないだの正月にも再放送されました。(*1)

 

*1.「音楽に掘り起こされる私(2)

カヴァレリア・ルスティカーナ

https://blogs.yahoo.co.jp/vosot_just/66226229.html

 

あれがよくシチリアの気風を描いていると言われましたが。

 

f:id:Vosot:20190802215357p:plain

フラン  そうですね。

今は少し文化的背景が変わりつつありますが、

確かに以前はああいうふうに性差別が強く、

家父長的なところがありました。

 

シチリアがそういう土地柄であるものだから、

高校生までの私はあまり幸せではなかったのです。

 

たとえば、私はイタリア人だけど、

サッカーには全く興味がありません。

そんなことも、私に孤立感を与えていました。

 

私は、子どものころから女性的なものに憧れてきました。

他の男の子たちが外でサッカーをして遊んでいるときも、

私だけは他の女性の同級生と一緒に

セーラームーンごっこしたり、

テレビで「セーラームーン」に釘付けになったりました。

 

このことは、後年に私が、

「自分には日本という生活環境が合うのではないか」

と考えるようになったことに関係しています。

 

子どもの私は、ものすごく

セーラームーンごっこがしたい」

と思ったけど、

シチリアの風土のなかでは、

そういう者はまわりからとても変な目で見られたり、

からかわれたりするんです。

 

そして、

「どうしてそんなものに興味があるんだ」

「どうしてサッカーをしないんだ」

と訊かれました。

 

今は、どこでも

ジェンダーに対する意識が高くなりつつであり、

ジェンダー表現の多様性、豊かさを認める時代に

なってきていますね。

当時は特に南イタリアであったからこそ、

そういうスティグマがけっこう強かったのです。

 

こういう環境で、

私は完全なひきこもりまでは行かなかったけれど、

ひきこもりぎみにならざるを得ませんでした。

 

いま自分の独自性に対しては、

むしろ誇りを持って、

ジェンダーのユニークなところで

ポジティブなロールモデルとして

他の人を激励したいと思っています。

 

こういったところにも、

日本のアニメーションがジェンダー表現の多様性を示して、

時代から見ると先駆的なことが多かったため、

私の精神的な成熟に関わりがあった気がします。

 

双子の姉とは対称的に

ぼそっと池井多  先ほど二卵性双生児だとおっしゃいましたが、

お姉さんもひきこもりぎみでしたか。

フラン  いいえ、姉は私とはまったく違って、

周囲への適応にまったく問題を持っていません。

今もメッシーナに住んでいます。

周りの人は、

私はいつも悲しげな顔をして、姉はいつも陽気だ、

と言っていたものでした。

今は大好きな日本に住んで、

私もより自分らしくなったので、

いまの自分は

お姉さんのように陽気であるかもしれない(笑)

ぼそっと池井多  お姉さんがいつも「陽気」というのは、

平均的な日本人が思い描くイタリア人、シチリア人の

「陽気」ってことですか。

フラン  そうです。

おいしいものを食べて、

人生の小さなことでも楽しんでいるタイプ。(笑)

ぼそっと池井多  すると、

お姉さんは彼女の女性性も抵抗なく受け容れている?

フラン  そうですね。

ぼそっと池井多  すると、ローマの大学へ進学したのには、

シチリアから出たかった意味もありますか。

フラン  そうです。大都会ローマに住んで、

自分が自分でいられる生活環境を

少しでも獲得したかったからでもあります。

ローマでは、だいぶ生きやすくなりました。

 

 

 

・・・「いきなり年頃の娘の父になった私(59)」へつづく

All Right Reserved (C)VOSOT 2013-2020