VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

貧困と人づきあい(77)東京のひきこもり、沖縄を歩く<9>沖縄のひきこもり当事者タイキさんとの対話(5)

貧困と人づきあい(76)」からのつづき・・・ 

by ぼそっと池井多
 

集中治療室の医療費

ぼそっと池井多 自殺未遂をして担ぎ込まれた病院から、
やがて退院するときがやってきたわけですね。

f:id:Vosot:20190713203150p:plain

タイキ はい。集中治療室には15日間も入っていたらしいです。
退院するときに、その医療費として、
150万円というものすごい金額の請求書がつきつけられました。
 
ぼそっと池井多 そんなにかかるんですか。
保険は効かないの。
 
タイキ 自殺未遂する前はひきこもっていて、
仕事もできなくて、
社会保険料が払えない状態がつづいていたんです。
だから、保険外です。
 
また自殺に失敗してICUに入院することになるなんて、
予想してなかった。
だから、いざ病院にかつぎこまれてしまったら、
そんな医療費なんか払えませんでした。
 
それでぼくは、蘇生したと同時に
150万円という借金を背負うことになったんです。
 
ぼそっと池井多 その支払いは、どうしたのですか。
 
タイキ とりあえずは、あれは短期の社会保険なのかな、
よくわかんないけど、
それを活用して月5000円とか3000円とかといったペースで
病院に払っていきました。
10年後の今でも、まだ全額は払えてません。
いまだにチマチマ払ってます。
 
ぼそっと池井多 医療費の問題を抜かしたら、
その病院にはコンスタントに通い続けたのですか。
 
タイキ いいえ。
父方の叔母さんが、ぼくの病状を聞くために、
ぼくといっしょに心療内科の診察室に入ることになりました。
ところが、叔母さんは
ぼくの主治医の先生と大喧嘩をしたために
出入り禁止になってしまったのです。
 
ぼくの治療をひっかきまわした叔母さんは、
ぼくの心のケアをすることもなく、
ぼくは屋根に上がってハシゴを外されたかたちになりました。
だから、ぼくはもうその心療内科へ行くのが嫌になってしまって、
薬ものまず、ただ友人に助けてもらいながら、
自力でうつ病を治す戦いが始まったのです。

f:id:Vosot:20190713203242p:plain

心のケアをする医者に「金払え」と言われ

タイキ 去年(2018年)の6月に、
ぼくはある人から浴びせられた何気ない一言で、
またガチなひきこもりになりました。
 
もう完全なひきこもり。
一歩も部屋から出られない。
それでしかたなく同じ病院の心療内科へ行きました。
 
ぼそっと池井多 田舎は医療機関が少ないから、
たしょういやな思い出があっても、
同じ総合病院へ行かなくてはならないのですね。
それで、どうしたんですか。
 
タイキ 心療内科の先生が、大声で
 
「きみは、以前の医療費をまだ払いきってないようだけど、
いったいどうなっているんだ」
 
と怒鳴ったんです。
 
ぼくは、うつで弱っていて、
その先生に心のケアをしてもらいたくて病院に行ったのに、
そんなお金の話ばかりされたので、
よけいにショックになりました。
 
ぼそっと池井多 へえ。私も、
精神科医にはひどい目にあっていますが、
その先生はいったい何を考えてるんでしょうね。
 
タイキ やっぱりぼくの心のケアよりも、
病院の経営なんじゃないですかね。
 
ぼそっと池井多 なんか、よく解せない事件ですな。
それでどうしたんですか。
 
タイキ それでぼくはひきこもりが悪化して、
ガチでひきこもっているうちに、
足に何かの菌が入ってしまって、
1か月後には外科手術が必要になったんです。
 
そこで、同じ総合病院に入院することになりました。
そしたら、またぼくの医療費の問題で
病院中が大騒ぎになりました。
 
たぶんぼくのカルテに、
「医療費を払いきっていない患者」
と書かれていたのでしょうね。
手術の前日に看護師さんがぼくのベッドへやってきて、
 
「あんた、お金も払えないのに、よく入院できるね」
 
って、言うんですよ。
 
ぼそっと池井多 へえ。
ふつう看護師が患者にいう言葉じゃないですよね。
 
タイキ その時はもうちゃんと社会保険料を払っていたから、
手術受けたお金は払えるだけど、
その病院には以前の借金が残っているもんだから、
それでようするにブラックリストに載せられているんでしょうね。
 
「この患者、手術してもいいけど、
また医療費が回収できないんじゃないか」
と病院側が二の足を踏んだんだと思います。

f:id:Vosot:20190713203321p:plain嘉手納基地

 
ぼそっと池井多 それでどうしました。
 
タイキ それで、信用できる女性の看護師さんに
 
「こんなことがあったんですよ」
 
とお話ししました。
 
そうしたら、数時間後に
そこの看護師長がぼくのベッドに謝りに来ました。
 
「ごめんなさい、うちのスタッフが
そんなことをあなたに言ったなんて」
 
って。
 
それでいちおう収まったんですけど、
ぼくが医療費を払えないといけないということで、
病院側はぼくに生活保護を受けさせようとして、
担当ケースワーカーを連れてきました。
 
精神科の主治医は、
他の患者がおおぜい聞いている大部屋で、大きな声で、
 
生活保護は受けるんですか、受けないんですか」
 
とぼくに訊くんですよ。ひどいでしょ。
 
ぼそっと池井多 神経のことを専門にしている
お医者さんにしたら、無神経ですね。
それでどうなりました。
 
タイキ いちおう生活保護を受けるということで、
いったん話が進んだんだけど、ぼくとしては
生活保護を受けなくてもなんとかやっていける」
と判断して、申請を取り下げる書面を書くことにしたんです。
 
ところが、やっぱり病院側が、
確実に治療費を回収したいものだから、
「取り下げないで、そのまま生活保護を受けなさい」
と、おおぜいの前で圧力をかけるんです。
ぼくがかたくなに拒否してんのに。
 
結局、明日手術だっていうときに、なにやら書類を持ってきて、
「ここにサインしてください」
という手続きを迫るんですよ。
 
ぼくは、ほんと、くやしかった。
だから、サインしないで、ふてくされて、
20分もうつむいて、
ウンともスンとも言わないで黙っていました。
 
だけど、
「もう、受けるよね」
と念を押されて、結局ぼくは根負けしてしまって、
無言でうなずいてしまったんです。
 
担当のケースワーカーと、
病院の事務員と、
お母さんの前で、
言葉は発さないんだけど、
コクっとうなずいた。
 
それがぼくの生活保護受給の始まりでした。
 
 
All Right Reserved (C)VOSOT 2013-2020