VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

貧困と人づきあい(78)東京のひきこもり、沖縄を歩く<10>沖縄のひきこもり当事者タイキさんとの対話(6)

貧困と人づきあい(77)」からのつづき・・・ 

by ぼそっと池井多

生活保護から抜けられない

タイキ そうやって入院中に生活保護を受けることになって、
やがて退院して、役所に行ったら、こんどは、
 
「もう、できるだけ働いてください。
A型支援でもB型支援でもいいから」
 
と言われました。
 
「でも、自分はうつが苦しくて、なかなか働けません。
発達障害もあるから、
へたに働くと職場に迷惑とかかけちゃうし」
 
といったところ、
 
「じゃあ、精神科の担当の先生に意見を聞いてください」
 
と言われました。
 
精神科の先生に意見を聞きにいったところ、
 
「あなたは働くことには困難があります。
無理して働かなくてもいいですよ」
 
と言われました。
 
でも、ぼくは自分の力でメシが喰いたいから、
何か自分の得意そうなことでメシの種にしようと、
ガラス彫刻の勉強を始めたんです。
 
生活保護を脱して、
ガラス彫刻の仕事でメシが喰えるようになるために、
営業へ行ったり、材料を買いに行ったりするために、
どうしてもクルマだけは必要だ、
ということになりました。
 
ぼそっと池井多 なるほど。
東京とちがって、
沖縄の田舎はクルマがないと、
どこにも行けませんからね。
 
タイキ そうなんです。
 
でも、そうしたら
生活保護だからクルマは持っちゃダメ」
と役所にいわれました。
 
クルマを持たなければ、
いつまで経っても仕事は始められず
生活保護を脱することはできません。
 
ぼそっと池井多 そのように役所に言ってみたらどうですか。
 
タイキ 言ってみました。
 
そうしたら、
「それじゃ、審議にかけます」
と。
 
それで審議にかけて、案の定
「やっぱりダメです」
と言われました。
 
「あなたは、こないだ精神科の先生から
『仕事はできない』
といわれたばかりでしょう。
仕事ができなかったらクルマを持つ必要ないでしょう」
 
って言うんです。
 
ぼそっと池井多 沖縄にかぎらず辺鄙な地方の場合、
クルマがないと、よけいひきこもらざるをえない
ということもありますよね。
 
そういう場合は、ひきこもっているのではなく、
ひきこもらされている(*1)、
という状況になってしまいます。
 
*1.一方では「ひきこもらされているという受動的な表現を
過剰につかうことによって
自らの責任をすべて免れようとする
ひきこもり当事者も存在する。
ひきこもりと責任の問題はたいへん複雑で
ここでは手短に述べることができないが、
「ひきこもらされている」
という表現をいちがいに推進する立場を
私は取っていないことだけ申し上げておく。
 
 
タイキ それでぼくがそれ以上の不満をいうのに、
役所へ行って言うとなると、きっと喧嘩になるし、
発達障害のぼくは、
きっと言ってはいけない言葉まで言ってしまうだろうから、
電話でその不満をこういうふうに言ったんですよ。
 
「おかしいんじゃないですか。
自立するにはクルマが必要なんです。
本気で生活保護を脱出したい人間に対して
『クルマは持ってはダメです』
というのは、生活保護を脱出するな、
といっているのと同じではないですか」
 
と。
 
そうしたら担当ケースワーカーは逆切れして、
 
「それじゃあ、いますぐ生活保護を打ち切ってもいいですよ」
 
というんですよ。
 
「そもそも受給開始のときに、
あなたは本当は生活保護を受けたくなかったんですよね。
だったら、今からでも遅くない。
生活保護を受けない、という選択があります」
 
と。
 
でも、その時点ですぐ生活保護を切られたら、
ぼくにはお金がないのです。
だから、ぼくは
 
「あなたは他人(ひと)に
強制的に甘い蜜を吸わせておきながら、
今になってとつぜん打ち切るんですか。
 
それはひどいんじゃないですか。
 
こんな醜い喧嘩になるんだったら、
なんで初めの時にぼくの生活保護申請には、
不受理という判断をそちらで下してくれなかったんですか」
 
といって、電話を切ってやりました。
もう、くやしくて、くやしくて。
 
 
 
 ・・・「貧困と人づきあい(79)」へつづく
 
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