VOSOT ぼそっとプロジェクト

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貧困と人づきあい(81) 東京のひきこもり、沖縄を歩く<13> 沖縄のひきこもり当事者タイキさんとの対話(9)こんな人になりたい

貧困と人づきあい(80)」からのつづき・・・ 

by ぼそっと池井多
 

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これからの人生

ぼそっと池井多 なんかお話をうかがっていると、
だいぶ底辺で苦労されてきたようなお話が多いですけども、
タイキさんの人生で「良かったこと」というと何でしょうか。
 
タイキ ぼくは友達運に恵まれています。
 
23歳のときに農業青年クラブで知り合った友達夫婦がいて、
彼らにはすごく精神的に助けられています。
 
はじめは農業を通じての仕事仲間だったんだけど、
一年ぐらい経って、
仕事を越えた、いろいろなことが語り合える友達になりました。
 
さらに一年後、ぼくが25歳でうつになってからは、
もっと支えてもらっています。
今でも感謝です。
 
ぼそっと池井多 ガチでひきこもっている時から、
どのように外へ出られるようになったのですか。
 
タイキ 父親から、
 
「お父さんはもう年だし、
あと何年生きられるかはわからないから、
それに向けてお前も早く自立できるようにならないと」
 
って言われ続けてました。
 
はっきり言って、それは結構きつい言葉でした。
 
でも、親の命も有限だし、
親が亡くなったらもっと生きづらくなるだろう、
という不安もありました。
 
そこで、5年前から、
 
「40歳になるまでに、
うつ病を克服してひきこもりから脱しよう」
 
という決意をしていたのです。
 
でも、決意をしたからといって、
すんなり外へ出られるようになるわけでもありません。
そこは、やっぱりいま話した
友達夫婦のおかげが大きいです。
 
何かにつけて気にかけてくれて、
ちょっと相談に乗ってもらったり、
 
「夜、ドライブにいこう」
 
って誘ってくれたり、
ヤンバル(沖縄本島北部。特異な生物相で知られる)とか
自然豊かな場所へ連れていってもらったり、
一緒に泣いてくれたり、
毎日数件の励ましのメールをもらったりしていました。
 
そうこうするうちに、
ちょっとでも何かできたら、
自分をほめるようにしてみました。
 
時間をかけて、
しだいに活動領域をふやしていって、
外に出る練習をしたんです。
 
その友達夫婦にも
「今度、こういうことができたよ」
と報告したら、本気でよろこんでくれて。
 
そんなことも励みになりました。
 
それから、ぼくがひきこもって、
なかなか外に出れなくて寝込んでいることを友達夫婦に話したら、
彼らは思わぬ言葉をかけてくれました。
 
「タイキは、
今ひきこもって苦しいと思っているかもしれないが、
それは違うよ。
 
タイキがうつ病とひきこもりから脱した時、
きっとものすごく忙しくなるから、
今はその時に向けての充電期間なんだよ。
 
からしっかり休んでおいてね」
 
彼らからこの言葉を聞いたとき、
ぼくはひきこもっている罪悪感から
一気に解放されたのです。
 
ぼくがガチでひきこもっていた間に、
友達夫婦からもらったたくさんのメールは、
今のぼくにとって大切な宝物です。
 
でも、ぼくとしても彼らにオンブにダッコではなくて、
いま自分が志しているガラス彫刻の仕事を成功させて、
自分が笑って暮らしていける状態になることが、
その友達夫婦への恩返しなのかなあ、
って思っています。
 
あるとき、その友達夫婦に言ったんですよ。
「自分が治ったら、なにか御礼をするね」
って。
 
そうしたら意外な答えが返ってきたんですよ。
 
「自分たちには何もしないでくれ。
逆にあなたみたいに苦しんでいる人に、
あなたの話を伝えてほしい。
 
あなたの体験談を、
あなたみたいに苦しんでいる人に語ることによって、
今度はその人が救われるから。
 
それが私たちへの恩返しだよ」
 
って。
 
だから、ぼくは
自分の体験を発信していこうと思っているんです。
 
ぼそっと池井多 それで私のこのインタビューにも
答えてくださっているんですね。
 
私からもその友達夫婦に「ありがとう」ですね。
 
タイキ 自分のつらかった体験を、
できれば笑いに変えて、
同じ立場にいる人たちに伝えたいと考えてます。
 
良い意味で
「あの人、ちょっとバカだよね。面白い人だね」
ってみんなに言われる、
芸人みたいになれたらいいなあ、って。
 
自殺未遂したときのことも、
自殺したい人の心理もちゃんと語りながら、
面白おかしく話せたらなあ、って。
 
まずは、今やっているサンドブラスト
ガラス彫刻を仕事として成功させて、
生活保護を脱出して、
この目標に向けて歩き出そう、
という気持ちになっているんです。
 
ぼそっと池井多 このインタビューを終えるにあたって、
最後にタイキさんからのメッセージをどうぞ。
 
タイキ うつ病、ひきこもりにならないに越したことはないですが、たとえなったとしても、
それをポジティブに考えたら、
そういう病気や状態になったおかげで出会える人々
というのがいるし、出会える仕事もあります。
 
たとえば、ぼくが今やっているサンドブラスト
ガラス彫刻という仕事はそうです。
 
だから、ぼくはうつやひきこもりは、
貴重な経験をさせてもらったと思うし、
出会った人たちにも感謝しています。
 
ぼくを支えてくれた友達夫婦と愛犬チョコには、
本当に心から感謝しています。
ありがとう。
 
(タイキくんとの対話 了)
 
 

 
編集後記
 
by ぼそっと池井多
 
このインタビューをおこなったのが、
2019年1月である。
 
タイキくんは、2019年3月末日をもって
生活保護から脱した、
と知らせがあった。
 
私自身はいまだに生活保護を受ける生活であるし、
そのことを否定的にとらえてもいないが、
なにもみんなが生活保護で生きる人生になればいいと
思っているわけではない。
 
それを脱する選択をしたタイキくんの場合は、
生活保護を脱したということを
私はすなおに祝ってあげたいと思う。
 
 
・・・「貧困と人づきあい(82)」へつづく
 
 
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    タイキくんにナイス☆彡 削除

    迷えるオッサン

     

    2019/4/10(水) 午後 11:23

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  •       

    迷えるオッサンさま コメントをどうもありがとうございます。

    そうですね、タイキくんナイスです。 削除

    チームぼそっと

     

    2019/4/11(木) 午前 11:36

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