VOSOT ぼそっとプロジェクト

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外国のうつ・ひきこもり事情(141)ロシアからやってきた取材クルーの話 その1

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by ぼそっと池井多

 

1月18日のひきポス編集会議には、初めてロシアから取材の申し込みがあった。 

 

それがまた、奇怪な話なのである。

 

まず初めに、私のところへクセニャーという女性から英語でコンタクトがあった。

「私たちは、ロシアのテレビ局で、クルーは総勢7人です。

ひきポスの編集会議を撮影したい」

というのである。

7人とは、なかなかの大所帯だ。

ふつうは、ディレクター、カメラマン、音声マン、通訳の4人というのが標準形である。

なかには、私とあちこちで行動を共にしているイタリアのクルー、マルティナフランチェスコ(*1)のように2人組という陣形もある。

ペンによる取材ならば1名でも可能だが、映像を撮るとなると、2名が最低限の人数構成だろうか。

 

 

クセニャーたちが取材を申し込んできた1月18日のひきポス編集会議は、あいにくいつもの練馬の会場が使えず、池袋の狭い会場を臨時に借りたので、それだけの人数を迎え入れるだけのスペースがなかった。

半年前から申し込みを受けていたイタリアのマルティナたちは、さすがに狭くても入れて差し上げる。でも、わずか一週間前に申し込んできたメディア、それも7名もの大所帯は、オイソレと入れてあげるわけにいかない。

だから、お断りした。

しかし、わざわざ飛行機代かけて日本までやってくるのに、手ぶらで追い返してはかわいそうだ、と私は仏心を起こし、

「編集会議が終わる時刻に、入り口で待っていてください。会議が終わった後、みんなで飲み会へ行きますから、その時間に私が質問にお答えします」

と連絡した。クセニャーたちはよろこんでいた。

 

 

ところが、ひきポス編集長の石崎森人が、

「自分宛てにロシアから取材の申し込みが来てるんだけど。

それも編集会議の当日みたいなんだよね」

などという。

調べてみると、こちらは日本人の通訳を表に立ててアプローチしてきており、やはり人数は7名とのこと。

同じロシアから、同じ7名という大人数で来ているとなれば、これはもう、私にアプローチしてきたのと同じ団体にちがいない。

さてはダブル・ブッキングしようとしているのだろうか。

なにやら不快な気分になった。

 

 

そういうことは、よくあるのである。

一つの団体へ取材を申し込むのに、

「窓口に対応に出た人間では埒があかないだろう」

などと勝手に考え、同時に他の人に当たる。

ビジネスの世界ではよくあることだろう。当事者活動も、団体を単位として動くとなると、このようなビジネスもどきの駆け引きが生じるのである。

しかし、受ける側からすると、こちらはいろいろな事情を考えて、先方へ最善の方法を提示してあげているつもりなのに、それを無視して他の筋を探っているとわかると、まるで「二股をかけられた」ようで、心が傷つくものである。

「こいつら。どうしてくれようか」

とムシャクシャしていたところ、やがて、なんと私にアクセスしてきたクセニャーたちと、石崎編集長にアクセスしてきたロシアのメディアは別のグループだとわかった。

前者はロシアのウラル山脈の中にある大都市エカテリンブルグの地方テレビ局であり、後者はモスクワの「今日のロシア」という局だったのである。 

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モスクワとエカテリンブルクの距離 by Google Map

つまり、同じロシアから、まったく同じ日に、まったく同じ人数で、二つの取材申し込みが来ていたのであった。

しかも、彼ら同士、知らないらしい。

なんとなく「自分の国からちがうメディアが取材に来ている」ぐらいのことはおぼろげに把握していたようだが、それがどこの局であるかも知らないし、ましてや、まさか自分たちがターゲットとしていた当事者団体を、同じ日に取材しようとしていたなどとは、夢にも思っていなかった様子である。

その結果、前者のエカテリンブルグの方が、私たちへの申し込みがわずかに時間的に早かったし、後者のモスクワは、

「編集会議が画として撮れないんじゃ、もうあなたたちには興味はない」

という感じだったので、お断りすることとなった。

 

まあ、国という単位で一つと数えて「同じロシアから」などと書いてしまったが、ご存じのように、ロシアは日本とは桁違いに広大である。

モスクワとエカテリンブルグでは、東京と北京よりも遠い距離があるだろう。だから、ぐうぜん同じ日にやってきても、それほど不思議ではないのかもしれない。

なにか、ロシアにおいて「ひきこもり」についての関心に火がつき、ロシア国内のテレビ局が、同時多発的に日本のひきこもりの取材に動き始めたものらしい。

いったい何がきっかけであったのか。

それにしても、両方とも7名という陣容であるのはおもしろい。それがロシアのテレビ界では標準の取材体制であるらしい。

そんなところにソ連時代の遺産があるのではないだろうか。

 

 

 ・・・ロシアからやってきた取材クルーの話 その2へつづく

 

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