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外国のうつ・ひきこもり事情(143)ロシアからやってきた取材クルーの話 その3

 by ぼそっと池井多

 

外国のうつ・ひきこもり事情(141)

外国のうつ・ひきこもり事情(142)

につづいて、ロシアはウラル山脈の中にある大都市エカテリンブルクのテレビ局から来た取材クルーのお話である。

 

まずこの女性が、当地のテレビ番組でリポーターとして活躍しているマリアさん

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ロシア人にしては小柄だが、肌や髪の色、そして香水のつけ方が、ある意味で典型的なロシア美人を私に想わせた。

写真で、左手前に写っているのは、刺身の盛り合わせでついてきたアジの頭と尾である。居酒屋で収録したものだから、こうなった。ロシア美人とのコントラストがまぶしい。

 

 

マリアは、あまり英語は話さないが、これまで私が英語で発表した記事をよく読んできていて、私の人生の根幹に迫るような鋭い質問をいくつも投げかけてきた。彼女は、私と母との異常な関係に関心を抱いているようである。

マリアがロシア語で質問し、それを英語に通訳して私へ投げかけるのが、この女性、クセニャーさんである。

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彼女は、ロシアに生まれたが、エストニアに育った。

エストニアとは、ロシアの西隣にあるバルト海の小国である。

 

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クセニャーは、エストニア語とロシア語の完全なバイリンガルであるだけでなく、現在はイギリスに住んでいるので、英語も堪能である。そこで、この7名からなるクルーで通訳として参加しているわけである。

 

エストニア語とロシア語なんて、同じようなものじゃないの」

というのは、向こうの国状を知らない失礼な物言いとなる。

エストニア語は、フィンランドハンガリーの言葉に近いのだという。つまり、中世においてヨーロッパにフン族の侵入があったときに中央アジアから流入してきた言語である。スラヴ語族であるロシア語とはまったくちがう。

クセニャーは、こうしてまったくちがう文化のあいだで、ロシアにいるときはエストニア人といわれ、エストニアにいるときはロシア人といわれたために、「異邦人」として育った。

そのため、私という人間に関心を持ったのだという。

 

 

日本では、よく在日の人たちが同じようなことをいう。

日本にいると、外国人扱いされ、疎外される。ところが、韓国や北朝鮮へ行っても、いくら民族は同じでも、日本に育ったということで外国人扱いされ、どちらにも溶け込めない、というのである。

私は、家系をさかのぼっても、半ば残念ながら日本人しか出てこないので、自分の異邦人性の根拠を血統に求めることができないもどかしさを抱えているのだが、やはり幼いころから、

「自分はどうも周囲とちがう。何か根本的なところでちがう」

という違和感をおぼえてきた。

アルベール・カミュ『異邦人』を読んで以来、その違和感の根拠に「異邦人性」と名づけた。

私が英語で書いたものを熟読してきてくれたクセニャーは、それが「わかる、わかる」というのである。

 

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さて、このように日本のひきこもりの取材に来た彼らであるが、それではロシアにひきこもりはいるのか。

ほんらいインタビューされる側である私だったが、彼らに逆インタビューしてみた。すると、このような答えであった。

「ロシアにもひきこもりはいる。でも、ロシアのひきこもりは、日本のアニメなどを見て『ひきこもり』という語を見つけ、自分たちが怠惰であることを、『ひきこもり』という言葉で正当化しているきらいがある。

今やアニメやマンガなどの新しい日本文化は、ロシアでもJapan Cool として若者のあいだで人気がある。そこに出てくる『ひきこもり』は、一種のかっこいい(cool)ファッションであって、ほんとうに悩んでひきこもりをやっているわけではない」

つまり、文化模倣としてのひきこもり、だというわけである。

同じようなタイプは、フランス、イタリアなど西ヨーロッパにもいる。

しかし問題は、そういう「文化模倣系ひきこもり」を、彼らは自分の目で見て確認し、取材しているのだろうか、という点にあると思う。

言い換えれば、ロシアのひきこもりは

「ほんとうに悩んでひきこもりになっているわけではない」

と断言できるのであろうか。

それを聞いてみたところ、

「まだロシアでは一人のひきこもりにも会っていない」

というのである。

「まずは、ひきこもりに関して一般視聴者の関心を呼び起こすために、今回はあなたたち日本のひきこもりを取材しにきた」

という。

まさに二年ぐらい前のフランスやアメリカのメディアと同じようなことをおっしゃる。

 

 

ちなみに、この7名のクルーの中にはカメラマンが3名いて、それぞれちがう種類のカメラを担当しているのだが、そのうちの一人が私たちひきポス編集部の許可なく、アフターに参加していた日本の女性ひきこもりを撮影しようとしたため、ただちにその場で収録した短い映像を消去させ、このカメラマンを次回から私たちの取材へは出入り禁止処分とした。

エカテリンブルグは遠いところにあるので、次回があるかどうか、わからないが、いちおう出入り禁止であると通告したわけである。

 

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