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やっぱり今日もひきこもる私(222)「地域で支えるひきこもり」運動の危険性 その1

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by ぼそっと池井多

 

「地域で支えるひきこもり」

とでも言うべきキーワードが、このところ急浮上している気がする。

 

そのうちに

「みなさんで 地域で支えるひきこもり」

といった標語のポスターでも貼りだされるのではないか、といった勢いである。

 

昨年4月の厚生労働大臣による通達、さらに昨年末に一部のひきこもり当事者団体が首相官邸へ行ったときの安倍首相の談話。

それらに基づいて、いま上から下へ大規模な伝達がおこなわれている。

 

ひきこもりは地域で支えましょう

 

おそらく年度が明けることには、各自治体レベルにまで浸透するのではないか。

 

 しかし現実問題として、

「地域でひきこもりを支えていく」

という政策は、どれほど有効なのだろうか。

 

私は、東京郊外に住む独り暮らしのひきこもりだが、「地域」、すなわち自分が住んでいる町内や近所で支えられるのは、まっぴらゴメンである。

 

私がひきこもりだからということで、もし「近所のおばさん(*1) がズカズカと私の生活領域に入ってくるようになったら、もうこれを撃退するべく、箒(ホウキ)を矛に、チリトリを盾にして戦うと思う。

 

*1. この場合「近所のおばさん」とは象徴的な表現である。だから男性の「近所のおばさん」もいる。

 

「地域で支えていくひきこもり」という概念がスローガンのようになっていった暁には、そういう住居侵入やおせっかいが社会風土として正当化されるようになるだろう。

 

なかには、すでに「おせっかい」ということの価値を再評価して、復活させようという恐ろしい動きもチラホラ見受けられる。

 

それはなにも、私のひきこもり部屋にまで入ってくるという、住居侵入罪が成立するレベルまで行かなくても同じである。

事前の約束も何もなく、

トン、トン

と玄関のドアをノックされることさえ、私は全身の毛がよだつほど嫌いなのである。

 

人が訪れてくるのがいやだから、私はちょっとやそっとでは人が訪ねてこないような、貧民窟の奥の奥のような場所にひっそりと暮らしている。

 

「そのわりには、お前はテレビだの何だの、メディアの表によく出てくるではないか。

ほんとうは人と会うのが好きで好きでたまらないのではないか」

などという、あらぬ疑いをかけられることもある。

 

しかし、メディアに出るということは、「人と会う」とはまったく別の行為なのである。

 

たしかに私は、ひきこもり当事者の立場から発言することが必要だと考えるから、そういうメディアの表にも臆面もなくノコノコと出ていくことが多い。

だが、スタジオのような設備でテレビ番組を収録する場合でさえ、せいぜいその場にいるスタッフさん4~5人と名刺交換するだけであり、それ以外の人と会うことはない。

会話もしない。会話をするのはせいぜいディレクター一人だ。ましてや視聴者の方々とは、誰一人会わない、話さない、人間関係を結ばないまま、すべては終了するのである。

 

私は、現在のボロアパートに引っ越して以来、ご近所とは二十年にわたって交渉はない。一部、ひょんなことからふと近所と生じた交渉については、以前書かせていただいた。

 

vosot.hatenablog.com

 

逆にいえば、こんなことが記事になるくらい没交渉なのである。

いまも「近所づきあいをしたい」などとはまったく思わない。

ましてや、もし私がひきこもりであるとカミングアウトしたうえで近所とつきあうとなると、たちまち「近所のおばさん」たちの好奇心の餌食となって喰いつくされるだけだと思う。

 

心配そうな表情を一時的に顔に貼りつけてやってくる「近所のおばさん」は、心の底では私に関する情報を獲得する触手をダイオウイカのように伸ばしている。

ひきこもりの私生活に関する情報をゲットすれば、たちまち防災無線さながらの音量と伝達度で町内へ放送するだろう。

そうされるのはまっぴらゴメンなのだ。

 

自分の人生には向き合いたくないために、どこか他の家に話題を求めてさまよっている、こうした「近所のおばさん」たちの「おせっかい」に正当性を与えるような「地域で支えるひきこもり」運動には、断固として反対していかなくてはならない。

 

 

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