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やっぱり今日もひきこもる私(239)「地域で支えるひきこもり」運動の危険性 その5 「そとこもり」の原理

 

 by ぼそっと池井多

 

前回「やっぱり今日もひきこもる私(237)」では、

 

ひきこもりを地域で見守る

 

ということを、ひきこもり本人は

 

ひきこもりを地域で監視する

 

と感じる可能性が大きいことを指摘させていただいた。

 

私は、しょせん私自身の感じ方しか述べられないわけだが、多くの他のひきこもりも同じように感じているのではないか、という気もするのである。

 

「ひきこもり」が社会的状態をいう語にすぎず、病症をあらわす用語ではない以上、ひきこもりと対人恐怖を直結させて考えるのは問題であるが、ひきこもりの中に対人恐怖症の人が多いこともまた、確かだと思われる。

かくいう私なども、その一人である。

このように言うと、よく、

「講演をして、テレビにまで出られる者が、なぜ対人恐怖などと言えようか」

などと言われるが、そうおっしゃるのは対人恐怖というものの本質を理解していない人だと思う。

 

たとえば、私の対人恐怖が出てくるのは、近所を散歩する時などである。

「そこの角を曲がったら、ふと近所のオバサンと鉢合わせになるのではないか」

などという恐怖が背筋を走る。

 

まったく知らない人よりも、ちょっと知っている人の方がよっぽど怖い、ということは、形を変えて、さまざまな所でいわれている。

 

すなわち、この世界の人間を、

A とてもよく知っている人々(家族、同居人など)

B ちょっと知っている人(地域の人、親戚など)

C まったく知らない人(会うことがない人)

という3つのグループに分けて考えたときに、いちばん怖いのは

B ちょっと知っている人

なのであって、

C まったく知らない人

ではない、ということである。

 

人見知りを始めたばかりの赤ちゃんなどであれば、Cがいちばん怖いということになるだろう。

しかし、ひきこもりを含め、対人恐怖の傾向を持つ大人は、「人見知り」のために人が怖いのではない。その人をちょっと知っているからこそ怖い対象となるのであって、まったく知らない人はかえって怖くないのである。

言い換えれば、同じ地域に住んでいる人は、「私」という人間を評価し、価値を定めてくる「他者」として意識されるから怖い。別の土地に住む、まったく知らない人は、この意味において「他者」にすらならないので、怖くないのである。

それを図に表すと、以下のようになる。

 

f:id:Vosot:20200306002411j:plain

なにも対人恐怖の人だけでなく、すべての人間に多かれ少なかれ、このような傾向はあるのではないか。

 

また、だから人は旅に出るのだ、とも思う。

つまり、自分の地域ではない「旅先」へ行くと、そこには自分を知らない、すなわち「他者と意識しないでよい他者たち」しか目の前にはあらわれないので、人はそのぶんだけ気が楽になるのだ。

それで旅に出ると、自由になった気分になるのだ。

あるいは、まったく好ましいことではないが、「旅の恥は掻き捨て」などという行為がおこなわれる。これは、旅先に住んでいる人たちを、自分に関わりのある「他者」と意識しないからできることである。やってはいけないことだけど。

 

さらにいえば、私が20代で「そとこもり」をしたのも、当時の私にとって、異国の人だったら「他者」として意識しなくてよかったからに他ならない。

もちろん、それは私が放浪した国に暮らす人たちを人と思わないような、とんでもない人間観を持っていたわけであるが、良し悪しを別として、ともかく若い頃の私にとっては異国の人は他者ですらなかったのだ。

いわば、私は彼らを「人間扱いしていなかった」のである。

私はとんでもない若造だった。

 

このように、地域の人というのは、家族ほど認識の基盤が共通していないから甘ったれるわけにはいかないし、一方では異国の人とも違って「人間扱いせざるをえない」「他者として意識せざるをえない」人々であり、この中途半端ゆえにもっとも怖い存在となるのである。

 

ひきこもりは地域で見守る

などというと、ひきこもりは世界でもっとも怖いと感じている「地域の人」たちに「見守られて」生きていくことになる。

こんなことが、ひきこもりのためであるわけがないではないか。

 

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