VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

やっぱり今日もひきこもる私(246)志村けんショック

by ぼそっと池井多

 

本ブログでは先週木曜日の「やっぱり今日もひきこもる私(243)」で言及した志村けんさんが、新型コロナウィルスで亡くなったニュースで、昨日は持ち切りだった。

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その記事でも書いたとおり、誰か自分が知っている人が亡くなると、皆にわかにその病気を実体として感じるようになるものである。

今回の新型コロナウィルスも、どこか対岸の火事のように感じていた多くの日本人が、自分が知っているコメディアンがそれで亡くなったということで、がぜん「恐い感染症だ」と危機感を抱くようになったらしい。志村けんショックである。

 

私は年代的に、志村けんがデビューのころを見ている。ザ・ドリフターズの年長メンバーであった荒井注が出てこなくなり、その代わりに入ってきた青年が志村けんであった。

むしろ、「日本のロビン・ウィリアムス」などと大家扱いされるようになってからの彼のお笑いは、私は見ていない。

バカ殿様」という彼のトレードマークは、自分のテレビをつけて見たことは一度もなく、むしろ昭和のころのザ・ドリフターズのドタバタ劇ばかりが記憶にある。

ところで、ロビン・ウィリアムス志村けん、いったい芸風のどこが似ているというのだろう。むしろミスター・ビーンの方が似ているように思うのだが。

 

ラーメン屋の奥から人々を凝視する姿

それでは、私が持っている志村けんの記憶は何か、というと、ラーメン屋に座った姿なのである。

本ブログで医療被害を取り上げている、齊藤學(さいとう・さとる)という精神科医がやっているさいとうクリニックや、NPO法人JUSTといった、通称「麻布村」は、東京・港区の麻布十番というところにある。

ここは、下町のような商店街があるものの、芸能人と外国人が多く住むことで知られている。

そんなところへ20年近くも通っていたので、一介の生活保護受給者、精神科の患者でありながら、芸能人を見かけることは多かった。

 

商店街の中に、担担麺を売りにしている大きなラーメン屋があり、夜にそこへ行くと、たいてい奥の席に志村けんが女の子たちを引き連れて一つのテーブルを陣取っていた。

この女の子たちというのが、どうやら有名なAV女優だったらしいのだが、そういうことに疎い私は知る由もない。しかし、志村けんだけは一目で認められた。

麻布十番を歩く芸能人は、たいていサングラスやマスクで顔を隠している。だが、志村けんはまったくそういうことはせず、誰が見ても彼とわかる姿で座っていた。

そして、逆に道行く人々をジーっと見つめているのである。

そのため、ラーメン屋の前を通り過ぎる人が、店内をのぞきこめば、一目で「あ、志村けんだ」とわかる。

まるで、わざわざ

「ここに芸能人がいます。見つけてください」

と言っているかのような姿勢と態度であった。

 

しかし、麻布十番という土地柄は垢抜けており、こういうところで芸能人だと指さす者は田舎者として軽蔑される空気がある。志村けんも、それを織り込み済みで、目立つ姿勢を保っていたのだろう。

 

それでは、なぜ彼はいつもそのラーメン屋のテーブルから人々を眺めていたのか。

私は、人間観察だと思う。コントの材料になる人間の行動を、じっと観察していたのにちがいないと思うのだ。

そういう時の彼の眼や顔は、「バカ殿様」で見せているコメディアンのそれではなかった。いうなれば作家のような鋭さと厳しさをたたえていた。

NHK朝ドラに出演し始めたばかりだという。映画初主演も計画されていたらしい。

古稀にして、これからは俳優という新しい仕事に挑戦しようとしていた矢先のコロナ感染であったのだろう。発症して10日で他界。

喫煙歴は長かったようだが、とくに持病はなかったという。

なにより本人が最も残念だったのにちがいない。

合掌。

 

 

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