VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

やっぱり今日もひきこもる私(277)フランスの教育テレビで放送されたはよいけれど。

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by ぼそっと池井多

 

 日本の「NHK Eテレ」にあたる、フランスの教育テレビ「France5」で先月、ひきこもりに関する長篇ドキュメンタリーが放送され、私のことが紹介された。 

こちらから見られる。

 


Le monde en face Hikikomori les reclus volontaires

 

しかし、私が満足できる内容のものではない。

 

私はここで、ともかく暗く怠惰で無能なひきこもりとして描かれているようだ。

私の登場に続く映像として、私と同じ年齢でゴミ部屋のなかで孤立死した中高年のひきこもりの方が腐乱死体となって発見された時の「特殊清掃」を取り上げている。

これによって、あたかも私が「死にゆく中高年のひきこもり」であるかのような印象を視聴者に与えているわけである。

 

中高年のひきこもりの問題には、たしかにそういう面もあるが、それだけを出すべきではない。

それだけを取材したのなら、まだしもそういう結果になるのもわかる。

ところが、実際はそうではないのだ。

 

この番組の取材班が昨年11月に来日し、何日か私を追跡取材したときには、東京・中央区で開催した第5回「ひきこもり親子 公開対論」を収録するなど、もっと活動的な場面も撮っていた。

 

しかし、そういう場面は1秒たりとも放送に使わず、このような仕上がりにしているのである。

「ひきこもりが当事者活動なんかしていては、ひきこもりのイメージを損なう」

と言わんばかりの構成である。

 

私が登場している以外の場面でも、やたらフランスの心理士などの専門家たちが、高みからひきこもりを偉そうに論じている。

まるで20年前の日本のひきこもり報道のようだ。

さらには、日本の自立支援団体を無批判に報道しているのである。

 

「そのような報道は繰り返してはいけません」

ということを、私は何度も彼らフランスの取材班に説いたのだが、にもかかわらずこの出来である。

 

 

 

 

彼らの収録は、もともと強引であった。

昨年11月、ちょうど私が、厚生労働省の居場所調査事業で九州へ出張する前の日々であった。

私のように、ふだんから外出や遠出に慣れていない者は、そのように大きな旅行の前は、よけいな他ごとに巻き込まれたくないものである。

そこで一度ならず断ったのだが、彼らの取材攻勢はものすごい勢いで、九州へ出発する前日も、夜11時ごろまで私の部屋に押し寄せてきた。

 

一度「ノー」を言っても、また頼んでくる。

何度も「ノー」と言い続けないと、引き下がらない。

その強引さは、これまでの他のメディアにはなかったものである。

 

 

 

 

ひきこもりに関する言葉というのは、たいへんデリケートである。

言い回し一つで、大きな誤解を生む。

そこで私は、インタビューに答えるときは、フランスの視聴者に対して、直接フランス語で答えることを申し出た。

へたな翻訳をされて、意味を変えられるのがいやだったからである。

 

ところが彼らは、

「日本人のインタビュイーがフランス語で答えるのは、ドキュメンタリー的に不自然だ」

として、私がフランス語で答えることを許さなかった。

そのため私は、

「いいでしょう。

それでは、私は日本語でインタビューに答えますが、そのかわり放送が決まったら、私が語っている日本語の箇所がどのようなフランス語に吹き替えるか、そちらの翻訳をテキストで送ってください。そして、それをチェックさせてください」

という条件を出した。

これが私の、彼らの取材を受ける唯一の条件といってもよかった。

彼らはそれを受け容れた。

だから私は取材を受けた。

 

 

ところがその後、彼らが翻訳を送ってくることはなかった。

私はてっきり、

「コロナで、フランスはひきこもりどころではなくなり、あの番組もお蔵入りになったのかな。ならば、仕方がない」

と思って甘受していた。

 

そこへ、いきなり放送である。

むろん、私がしゃべっている箇所のチェックはさせてもらえないままの放送であった。

彼らは、私の最後の条件すら無視したのである。

これは契約違反だ。

 

そして、

「日本人がフランス語で答えるのは不自然だ」

と言っていたくせに、この映像に登場している日本人の精神科医にはフランス語で答えさせている。

 

これは結果的に、

精神科医は知識階級だから、日本人でもフランス語は話すが、ひきこもりはそうではない」

といった印象を醸し出しているような気がする。

 

 

私は、先方のディレクターであるミカエル・ガニェ(Michaelle Gagnet)に抗議した。

抗議の内容と、先方からの返答に関しては、また後日に書かせていただくことにする。

 

 

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