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やっぱり今日もひきこもる私(319)東京のひきこもり、北海道へ向かう<7>札幌のひきこもり居場所「よりどころ」に参加

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by ぼそっと池井多

 

10月19日、札幌で開催されているひきこもり当事者会「よりどころ」に参加させていただいた。

昨年の今ごろ、私はこの「よりどころ」を見たくて、厚生労働省の視察事業で札幌を訪れることを楽しみにしていたのだが、あの時はそれが叶わなかった。

ようやくお邪魔することができた、というわけである。

 

札幌圏には、いくつかのひきこもり当事者会があるが、中でもこの「よりどころ」には長く定期的に続いている伝統がある。

コロナ禍が始まる前は、私たちチームぼそっとが東京でやっている「ひ老会」と同じように、和室でやっていたそうだ。

やはり和室という空間には、くつろぎ、話の内容も濃くなるという不思議な力がある。

しかしそれは裏を返せば、「3密」になりやすいということでもある。

そこで、これまた私たちチームぼそっとと同じように、「よりどころ」もコロナになってからは広い洋室でやるようになったとのこと。

その洋室が、17日に私が講演をさせていただいた「かでる2・7」という建物の10階であり、窓からの眺めがすばらしい。

 

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「よりどころ」の会場から

 

札幌の中心街を歩いているときには気がつかなかったが、こうして10階の高さから見ただけでも、札幌という街は山に囲まれていて、しかもその山々が思いのほか近くまで迫っていることがわかる。

 

この当事者会でファシリテーターをしていらっしゃるピア・スタッフの方々が、窓から眺望される景色について説明してくれた。

まず山の斜面に作られたスキー場やジャンプ台である。

これらは、私が小学校2年生のとき、1972年に開催された札幌冬季オリンピックで使われたものらしい。

そして足下、すなわちかでる2・7の目の前には、北海道大学の植物園が広がっていた。

 

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手前の森が植物園である。

ここには、原生林を忠実に再現したエリアや、アイヌなど先住民たちの縄文時代に相当する遺跡、さらに開拓にまつわる博物館などがある。


そして、その博物館には、明治11年に札幌でつぎつぎと5名もの人を襲ったヒグマの胃の内容物が展示されていたらしい。
その内容物とは、ようするにヒグマに食べられてしまった人々の肉ということになる。

「グロテスクで教育上よろしくない」

と考えられたのか、現在は展示されていないそうである。

 

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 「よりどころ」は、公設民営という形を採っている点において、全国でもっとも先進的なひきこもりの居場所といってよい。

つまり、札幌市が設置し、NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークという民間団体が運営しているわけである。

この日も、札幌市から男女それぞれ1名ずつの公務員の方々が参加していた。

 

私が昨年、ここを見学したかった理由もそのあたりにあった。

かねがね私は、もし行政がひきこもり支援をしてくれるならば、ひきこもり当事者を個別訪問アウトリーチするよりも、すでに活動し機能している当事者活動を後方支援するほうがはるかに効率がよいのでは、と考えている。

 

もともと、ひきこもりは「効率」という概念と相性がよくない。

「効率」を求めると、ひきこもりに考える暇が与えられず、「引き出し」などということが考えられてしまう。

しかし、だからといって、私たちはなにも反効率主義を目指しているわけでもないのだ。必要なときには、効率を求めてよいはずである。

とくに行政は、限りある予算とマンパワーで、できるだけひきこもり支援の実効を上げたいだろうから、この文脈においてやはり効率は考慮されるべきだと思う。

 

下の図は、17日の札幌講演でも使った「ひきこもり当事者の諸層」を示した図である。

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ひきこもりの多様性を考えるのにあたって、いくつか軸を設定することが可能である。

これは、その中でも当事者活動というものを軸に、ひきこもり当事者の集合を同心円状に想定し、いちばん外側「L1 (=Layer 1)」を「当事者活動できる当事者の層」としてみたものだ。

次の内側「L2」は、自分で開催することはできないが、「当事者活動に参加できる層」である。

次の「L3」は、今は当事者活動に参加できないが、いずれ参加したい、あるいは参加できるようになりたい、と考えている層である。

最後に、円の中心部にある「L4」は、当事者活動に参加しようとも思っていない、あるいは「それどころではない」か、そういう情報が行き届いていないか、この手の情報が受信できない当事者層であり、「渦中の当事者」などとも呼ばれる。いわゆるガチこもり、あるいはサバルタン的当事者である。

 

東京周辺では、L2の当事者たちがL3の当事者に声をかけ、居場所や当事者活動へ連れてきてくれることが多い。そのようにして、L2はL3を「ピア・サポート」しているのである。

もちろん、やっている本人たちはそういう言葉で意識しているとは限らない。

 

同じようにL1は居場所を開いたり、当事者活動をおこなったりすることで、L2の方々にケアやサポートを提供している。

私自身、L2の方々を「支援している」つもりなどサラサラないのだが、結果として私はL1としてそのようなことをやっていると見る人たちはいる。

こうして、L1がL2を、L2がL3を、それぞれ「ピア・サポートする」という流れができていると考えられる。支援のフローである。

 

ところが、ここで途切れるとL1の人たちが力尽きてしまう。

当事者が、当事者活動を継続するのは、並大抵なことではない。

ただでさえ、自身が当事者なのだから、メンタルにもフィジカルにも弱かったりする。

場所の確保も大変だし、社会からのバッシングと闘うだけでなく、参加する当事者たちからの突き上げが起こることもある。

そういうことにエネルギーが費やされるL1の当事者層が消耗し、力尽きてしまわないように、行政のひきこもり支援の方々はL1を後方から支援してほしい、と申し上げている次第なのだ。

そうすれば、行政→L1→L2→L3 という支援のフローが成り立っていく。

これが、「当事者活動の後方支援」が「行政による当事者の個別訪問」よりも効率がよく、現実的であると思われる所以である。

そして、札幌の「よりどころ」はその点をかなりの部分、実現している先駆的な事例なのである。

 

 

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