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貧困と人づきあい(99)ひきこもりは資本主義がすべて悪いのか ~ ヤン・タンキアンとの対話

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Illustration by PhotoAC

by ぼそっと池井多

 

GHO(世界ひきこもり機構)に参加しているヤン・タンキアンさんは、国籍不明のひきこもりである。

どこに住んでいるのかもわからない。

名前からすると、どうもオランダ人っぽいが、海外のひきこもりの多くがネット上では日本語の名前を名乗っていることからもわかるように、名前がその人の国をあらわすとは限らない。

 

写真を拝見するかぎり、ヨーロッパ人の若者のようである。

もっとも、どこの国の人であろうとも、ひきこもりであることにはあまり関係がないのだが。

 

彼との会話は、本ブログにも掲載した「やっぱり今日もひきこもる私(337)」にも書いた、以下の部分を私がGHOのページにも英訳して載せたことから始まった。

 

 ぼそっと池井多

以前は、冷蔵庫の中が空に近くなっているのを見ると、どことなく罪悪感をおぼえたものだ。


誰に対して? わからない。


なぜ罪悪感? やはり「働いていない」という事実から来る感覚だったのだろう。
しかし今年は、空の冷蔵庫を見ても罪悪感は湧いてこない。

 

それを見て、反応したのがヤン・タンキアンであった。

 

ヤン・タンキアン

あんたは働かないことで誰に借りを作っているわけでもない。

 

あんたが働きたいときにだけ、働けばいいのさ。

 

働くっていうのは、そういうことだ。

 

働くってことをするかしないかは、あんたの気持ち一つでいいはずだ。

 

なるほど。

そう言ってもらえるのは、ひきこもりにとって心強いことである。

しかし、それですべて済んでいれば、事は簡単なのだ。

 

働くことを強制してくる社会は、私だって御免こうむりたいわけだが、ここまで「働く」ということをバッサリと斬って捨てられたら、そもそもひきこもりの悩みの大半は解決しているのではないか。

 

どうも、彼の楽観主義が引っかかったので、こうお返事してみた。


ぼそっと池井多

「働いていない」ということから罪悪感を抱くとき、

たしかに「働いていない」ことで

特定の誰かに借りを作っているわけではないかもしれないが、

あなたが生きていくために、

あなた以外の人が働かなくてはならないという状態から

あなたは借りがあるような気持ちになることが

あるのではないだろうか。 

 

ヤン・タンキアン

いいや、ぜんぜん。

 

みんな、資本主義が悪いんだよ。

 

もし人々が自分の家を所有しないで、

食べ物が獲れる森や野原も所有しなかったら、

誰もがそこで自分が食べていくぶんの食べ物を収穫できる。

 

人は誰でも狩猟や農耕ができるはずだ。

 

でも、今の社会では、

森も野原も誰かによって所有されているから、

人はそこで勝手に食べ物を得るわけにいかない。

そうなると、人は資本主義社会で食べ物を得るためにクソみたいな仕事をして金を稼がなければならないのさ。

 

ぼそっと池井多

狩猟や農耕ができないひきこもりはどうする?


ヤン

狩猟や農耕ではない、何か別のことをやればいい。

 

たとえば、子どもたちを見ているとか、

何かを拾って採集するとか。

 

ぼそっと池井多

もし、子どもたちを見ていることも、

何かを拾って採集することも

すべて面倒に感じられてやりたくなくて、

ただ洞穴の中で独りひきこもっていたかったらどうする?

 

ヤン

腹が減るまで、

洞穴の中でひきこもっていることを楽しめばいい。

 

ぼそっと 池井多

腹が減ってからあとも、まだいっこうに

子どもたちを見ていることも、

何かを拾って採集することも、

やりたくなかったら、どうする?

 

大多数のひきこもりは、この状態なのだと思う。

 

ヤン

そうしたら、洞穴を出て、

視界に入った最初の生物を殺して喰って、

腹を満たせばいい。

 

 ぼそっと池井多

話を聞いていると、

どうやらあなたが語っているのは、

自給自足のための方法論だと思う。

 

たしかに、もし完全に自給自足で生きていけるのなら、

働こうが休もうが自分の勝手であり、

「働かない」ということからくる

罪悪感も存在しないかもしれない。

 

しかし、自給自足だったら、

資本主義社会の現代においても

すでに可能なのではないか。

わざわざ旧石器時代みたいな状況設定を

考えなくてもよいのではないか。

 

はたして資本主義がひきこもりを生み出す

諸悪の根源なのだろうか。

 

そして、何よりもまず、

私自身をふくめて、

いま生きているひきこもり当事者のほとんどは、

自給自足で生きていくだけの強さがないのだよ。

 

だから、誰か他の人が生産する富に頼って

生きていかなくてはならない。

すると、その状態が罪悪感をもたらすようになるのだ。

 

この罪悪感をどうする、っていう話なんだけど。

 

 ヤン

おれの言っていることは、

「人間というのは自然の中で生きるのが一番いい」

ってことだ。

しかし、資本主義がそういう機会をおれたちから取り上げてしまった。

資本主義はおれたちに過酷な労働環境やルールをもたらした。

 

そのルールで得をしている連中もいるかもしれないが、

おれたち全員がそのルールを受け容れられるわけじゃないってことだ。

 

それが、「働く」ということとおれが格闘している理由だ。

 

もし政府が人々の生きていく金を作り出していくようになれば、みんなお金と健康保険には簡単にアクセスできるようになる。

そうやって政府は人々をケアしなければならないはずだ。

 

 

どうも話が喰い違ってきた。


ぼそっと 池井多

あなたのモデルでいうと、

政府の作りだすお金は、誰が労力を注いで稼ぎ出すものなのか。

  

私が語っているのは、

ひきこもりと、ひきこもりが抱きやすい罪悪感の問題です。

 

そして、資本主義を標榜していない北朝鮮でも、ひきこもりがいるということを私は知っている。

 

 

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