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当事者活動を考える(43)いじめ・差別を生みだすのは「異質性」より「同質性」

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2019年2月パリにおける反ユダヤ主義抗議集会 Photo by Olevy


 

by ぼそっと池井多

 

今年2月に起こったネット暴力事件を思い返すと、あそこには現代の人間社会にまつわる、ありとあらゆる構造が凝縮していたことに気づかされる。

 

2月のネット暴力事件とは

vosot.hatenablog.com

 

 

まず、いじめや排斥が発生する構造である。

 

いじめや排斥というものは、対象の異質性から起こると人は考えがちである。

つまり、「ちがう」からいじめられるのである、と。

 

少なくとも、いじめや排斥の加害者たちはそう考えている。

ひらたくいえば、

「○○(いじめられる子)は、自分とちがって汚いから」

「○○(いじめられる子)は、自分とちがって貧乏な家だから」

などなど、「自分とちがう」から差別し、いじめていると考えているものである。

 

しかし実際には、いじめや排斥の本質的な原因は、対象の同質性から来ている割合のほうが大きいのではないか。

「ちがう」からではなく、「同じ」だからいじめられるのである。

 

「○○(いじめられる子)は、自分と同じクラスにいるから」

「○○(いじめられる子)は、自分と同じ年恰好だから」

という同質性が、いじめや排斥を引き起こす主な原因なのだ。

あまりに自分とちがう存在は、いじめの対象にはならない。

 

そのうえで、加害者であるいじめっ子たちは、自分たちのいじめや排斥を正当化するために、何かネガティブな理由を鵜の目鷹の目で探し出す。

たとえば、上の例でいえば、「汚い」「貧乏である」といった理由が、いじめるために採用されるネガティブな理由にあたる。

ほとんどの場合、加害者たちは、自分たちが「いじめている」という認識を無意識に撥ね返して持とうとせず、「汚い」「貧乏」といったネガティブな属性から自分たちを「守る」ために、「正義」の行動をしていることにしている。

そこには群集心理が働くから、いじめ加害者たちは一時的に数において優勢になる。

そのことに酔っているから、加害者性を正義としているという事実まで自己分析して深く考えることはない。

 

 

 

それは、視野を世界史レベルに広げても同じである。

たとえばヨーロッパの歴史において、ユダヤ人が差別や排斥の的になったのはなぜか。

それは、ヨーロッパに住んでいるユダヤ人が、こんにちのドイツやフランスなど、それぞれ土着の民族であるヨーロッパ人の住民と「ちがう」からではなく、「同じ」一神教に類別される宗教を持ち、「同じ」町で生活し、生活のレベルも「同じ」ようなものだったからではないだろうか。

生活のレベルがまるでちがった王侯貴族に対して、ヨーロッパ人の住民は革命を起こしたが、革命による攻撃は「差別」「排斥」とは異なる。

 

日本国内でも、被差別部落朝鮮半島の出身者への差別や排斥が起こったのは、彼らが見かけ上は日本人と「同じ」ようなものであり、「同じ」町で生活していたからである。

 

近年は、日本に住む外国人人口が多くなってきた。

とくに白人や黒人など、非アジア系の外国人のなかには、

「自分たちは日本で差別されている。なぜならば、6ヵ月ごとにヴィザは更新しなければいけないし、マンションやアパートなども自由に借りられないからだ」

と訴える人々がいる。

そういう人たちは、外見的にも日本人から見れば異質性が高い。

そういう例をもって、

「ほら、異質性が高くても、ちゃんと差別されるじゃないか」

という人がいるかもしれない。

 

ところが、そうではないのである。

そういう体験をすれば、たしかに「日本で差別を受けた」と感じるかもしれないが、私がここで語っている被差別部落朝鮮半島の出身者が訴える差別とは、いささか質と深度が異なるように思う。

民族史を語るときに出てくる差別というのは、もっと歴史と生活に深く複雑に浸透した現象である。

そういう差別は「異質性」だけでは語れない。

必ず「同質性」が大きく関わっているのである。

 

なぜ、このような話をしたかというと、2月のネット暴力事件の原因は、振りかざされた性差別や性暴力などは名目にすぎず、ほんとうは嫉妬であったが、その嫉妬そのものが同質性から来ていたと考えられるからである。

それについては、また後日、詳しく考えてみたいと思っている。

 

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