VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

帰りたかった家(11)

帰りたかった家(10)」からのつづき・・・

by T.A.

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それから何年かが経った。

東日本大震災が起きた時、
わたしはその直後、
午後3時から受けることになっていた研修のため、
横浜の近くの、ある海沿いの街の
ビルの6階、会議室にいた。

ぼちぼち人が集まり始めたところで、
強い揺れに見舞われた。

新しい建物だったので、
倒壊する恐れはなさそうだったが、
高層階は揺れが激しい。

会議室の長机の下にもぐりこんだが、
折りたたみ式の机は頼りなく、
部屋の隅に置かれたテレビ台は大きくしなり、
上に乗った大きなテレビが
今にもこちらに飛んできそうであった。

津波警報が解除されたあと、
動き出したバスで駅に着くと、
店のシャッターはすべて下り、
途方にくれた人々であふれ返っていた。
 
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電車は動きそうにない。

公衆電話には長蛇の列ができている。

緊急事態に気持ちが高揚したのか、
電話越しに状況説明を延々と続ける人もいて、
順番がなかなか回ってこない。

どのバスに乗ればいいのか。
停留所はどこにあるのか。
バスは動いているのか。
そして、いつ到着するのか。

みんな、おそらく自分の家に帰るため
必要な情報を求めて右往左往していた。

停電で街灯や信号も消えていたので、
ようやく乗り込んだバスは、
まるで山道を走っているかのようであった。


・・・「帰りたかった家(12)」へつづく
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