VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

あんたなんであの子と一緒じゃないのよ!!(2)

名作リバイバル劇場
by オー
 
この臨海学校に限らず、
私は班決め
という作業が大嫌いだった。

当時は1クラス40人
男子20人女子20人が普通だった。

20人の女子で班決めをする場合、
ひとつの班を
4人にすると5つの班、
5人にすると
4つの班ができるが、
いくつの班に分かれるかは関係ない。

母の価値観による
「一番頭のいい子たちの班」
に私は入らなければならなかった。

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しかし、頭のいいSちゃんの班に
私が入りたいと思っても、
入れるかどうかはわからない。

さっさとSちゃんが
班を決めてしまえば、
それで終わりだ。

あの臨海学校の時がそうだった。

Sちゃんはさっさと班を決めてしまい、
私が入る余地はなかった。
 

 
 
 
 
途方に暮れる私に声をかけてくれたのが
オバチャンだった。

背が高く横幅が広く、
子どもなのに
いかにも古き良き昭和肝っ玉母さん
イメージ 1というようなかんじだったので、
彼女はみんなに
オバチャン
と呼ばれていた。

オバチャンは

「オーちゃん、うちの班に入らない?」

と言ってくれた。

しかし、その時私が考えていたことは


「どうしよう、Sちゃんの班に入れなかった。
母に叱られてしまう」

ということだけだった。

私自身が「どうしたいか」ということではない。
オバチャンの気持ちでもない。
母の気持ちだった。

私は母に気に入られるような行動を、
母に叱られないような行動を
取らなければならないのだった。


まだ決まっていない班に、
母の価値観で言う
いちばん頭の悪い子たちの班があった。

そこには絶対に入れない。
それならオバチャンの班のほうがいい。

オバチャンには申し訳ないけれど、
私はそう考えてオバチャンの班に入った。

そうやってやむなく決まった班のメンバーリストを見て、
母は怒鳴ったのだ。

「あんた、なんでSちゃんと一緒じゃないのよ!」

それに対して、
私はほんとうはこう言いたかった。

「お母さん、
私もSちゃんの班に入りたかったけど
入れなかったのよ」

でも、母と私の関係性の中では
そんなことも言えるはずがない。
 


 
 
 
 
 
息子の臨海学校のしおりを見たとたん、
昔の母の怒鳴り声がよみがえった。

そして何十年も思い出すことのなかった
オバチャンの風貌を、
そして途方に暮れる私をちらちらと見ていた
Sちゃんの意地悪な顔を思い出した。

臨海学校で何をしたかについては記憶がない。


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臨海学校から帰ってきた息子は、
どんな体験をしたか
目をさせて私に語った。

私は息子がうらやましかった。

好きな友だちと一緒の班になっている。
臨海学校を楽しんでいる。
そして
その様子を素直に母親に報告している。

きっと班決めも時間はかからなかっただろう。
入る班がなくて途方に暮れるようなことはなかったのだろう。

私は、うらやましい気持ち、
この悔しい気持ち、
私を怒鳴ったのこと、
意地悪だったSちゃんのこと、
優しかったオバチャンのこと
ミーティングで話した。

何度も何度も話した。

私はSちゃんが嫌いだった。
オバチャンが好きだった。
Sちゃんの班になど入りたくなかった。

オバチャンの班は楽しかった。
でもそれを母に言うことはできなかった。

今ならわかる。
私は私の思うとおりに行動したかったのだ。
母の価値観ではなく
私の価値観で決めた班に入りたかったのだ。


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臨海学校を心から
楽しみたかったのだ。

息子にはそれらができている。

それを私はようやく
喜ぶことができるようになった。




 
 
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