VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

人とつながれない私(2)

人とつながれない私(1)」からのつづき・・・

 

苦しかった大学と就活

写真はイメージです。by PhotoAC
 
ぼそっと池井多:瀬戸さんはそうやって
大学でひきこもりが始まったわけですね。

でも、ときどき、歯を食いしばりながら
キャンパスには出て行ったわけでしょう。
大変でしたね。

卒業はされたんですか?

瀬戸:担当のゼミの先生のお情けで、
卒論を受け入れていただいた感じでした。

ぼそっと池井多:そうすると、就職という話になるでしょう?

瀬戸:もうまったくそうです。

そういう時期になった時に、
ちょっとお茶する子がいて、
その子に「行こうよ」と言われて、
いちど会社説明会というものに行ったんですよ。

そうしたら、もう何を話しているのか全く理解できない。

そのために自分が何をしなければならないか、わからない。

(こんな所に適応するのは)とてもじゃないけどできない。
自分にはあまりにも高度すぎる。
……そう思いました。

ぼそっと池井多:私自身、ひきこもりが始まったのが
就職活動の時期だったので、
いっしょけんめい会社訪問なんかに身体は持って行くんだけど、
やはり何を話されているのか
さっぱりわかりませんでしたね。

なんか就職戦線に特有の「用語」みたいなのがいっぱいあって、
使われている言葉の意味がわからない。

また、何で自分が
こんなことしなくちゃいけないのかがわからない。

瀬戸さんの場合は、就職はしなかったのですね。

瀬戸:はい。もう無理だと思って。

「じゃあ他に何をしたい」とか、
「何をするか」みたいなこともなく、
とにかく卒業して家賃を払うためにアルバイトをしてました。

大学時代のひきこもりは、
ほんとに辛いひきこもりだったし、
その時代に、子どもの頃から・・・

こんな話もしていいのかな?

ぼそっと池井多:どうぞ。


宇宙の果てに飛ばした「おばあさん」のイメージ

Photo by Hubbles
 
瀬戸:子どもの頃から、頭の中におばあさんがいたんですけど、
その人がどんどん大きくなって。……

こんなこと言っても多分、
理解してもらえないと思うんですけど、
ちょっとだけお時間いただいて詳しく話します。

子どもの頃に、ときどきふっと思い浮かぶ情景があって。

やせ細った垢まみれの老女が、
垢まみれのせんべい布団の中に横たわって
糞尿にまみれて生きながら腐ってる場面が
ときどき思い浮かぶんですよ。

それが浮かぶと、すごく怖いんです。
将来の自分の末路だって思うんですよ。

とにかくそのイメージから逃れるために、
あそこまで年取る前に死ねばいいんだから大丈夫だ
って言い聞かせることで安心してたんですね、子どもの頃は。

でも大学に入ってコミュニティがなくなって、
部屋に引きこもってる。
外に出て行って作る気力もなくて。

「努力すれば良いじゃないか」

っていう人もいると思うんですけど、
努力の仕方もわからないし

「あたし、どこに行けば、何をすれば良いのか、
どうすればいいのかわからない」

と思った時に、
気力も削がれちゃってるので、
何もわからない状態でただ部屋にいるだけだった時、
どんどんイメージが浮かぶ。

それまではたまに浮かんでたのが、
常に頭の中にあるようになっちゃったんですね。
常に糞尿まみれの、
生きながら腐ってるようなおばあさんがいる状態になっちゃって、
取り憑かれてるようになっちゃって。

結局、

「ああなる前に死ぬんだから大丈夫」

ってやっても消えないから、

「早めに(死のうかな)」
って思ったんですよ。

(それで自殺を考えました。)

でもその時初めて

「ちょっと死にたくないな」

って気がついて。

それまでは

「死ねば大丈夫だから」

というのは、
本当に死にたいかと関係なく、
おまじないだったんですね。

その時、

「そんなに今、死にたくないな」

と初めて思って、
初めてそのおばあさんに
居なくなってもらう方向に持ってったんですね。

ぼそっと池井多:精神科の医療機関で、
そのおばあさんのイメージに
居なくなってもらうようにしてもらったのですか?

瀬戸:あ、違います。

「おばあさんには居なくなってもらうしかない」

って思った時に、
時間だけはたくさんあったので、
まず、そのおばあさんのイメージを
紙くずの中にクシャクシャに丸めて、
頭の中で捨てるんですね。

でも捨てると同時に戻ってきちゃうから、
また捨てなくちゃならない。

何度もそうやって、
だんだん飛距離を伸ばして行くんですよ。

放った時の落ちるまでの距離が長いって想像するんですね。

飛んでく、飛んでく、飛んでく、落ちてく。
想像している間は戻ってこない。

でも落ちたと認識したとたんに戻ってきちゃうんですよ。

だからどんどん飛距離を伸ばして。
ちょっと言うのが恥ずかしいんですけど、
そのおばあさんが宇宙空間をどんどん遠ざかって行くと、
ずっと想像してました。

私がトイレ行ったりご飯食べたり、風呂入ったりして、
飛ばすのをやめると、すぐ戻ってきちゃうんですよ。

だから飛んで行くところを想像して、
戻ってきたらまたクシャクシャにして、
それがどんどん遠くになって、
宇宙空間を遠ざかっていく所を想像することでしか・・・。

ぼそっと池井多:そうすることによって
瀬戸さんの頭の中から、おばあさんのイメージは
宇宙の果てに飛んで行って、
永久になくなったわけですね?

瀬戸:そうなるまでに時間かかりましたけど、
そういう方向でした。
 
 
 
 
・・・「人とつながれない私(3)」へつづく
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