VOSOT ぼそっとプロジェクト

ぼそっとつぶやくトラウマ・サバイバーたちの生の声...Voice Of Survivors Of Trauma

盗みが止まらなかった私(176)逃げている母親

盗みが止まらなかった私(175)」からのつづき・・・

by ぼそっと池井多
 
リュウ もともと接見室というのは、
 対面をする場なんだけど、
 ああいうところでも母親は、
 ぼくとちゃんと対面して話さなかった。

 もし、あの場に警備の警察官がいなくて、
 ほんとうに接見室で母親と二人きりになっても、
 やっぱりうちの母親は、
 何かしらキレイゴトを言っただけだっただろうと思う。

 ほんとうの感情なんて、きっと言わなかっただろうと思う。

 「待っているからね。
 早く外へ出ていらっしゃい。
 そうしたら、いっしょにやり直そうね」

 みたいな、いかにも模範回答みたいなことしか
 言わなかっただろう、と。

 「やり直そう」ということの意味が、もし
 母親自身がぼくにやってきたことを反省して、
 それで人生をやり直そうということではなくて、
 とにかく全部、過去はなかったことにして、
 それで「やり直そう」というのに決まっている。

ぼそっと池井多 ああ、そうだろうね。

 私の原家族でも、
 母親はいつも居丈高に攻撃的にふるまうんだけど、
 あれは私を恐れてもいるんだと思うんですよね。

 リュウさんのお母さんはソワソワして、
 「じっくり話す場面を作らなかった」
 っておっしゃったけど、
 それに相当する場面が、
 舞台は拘置所ではなかったけど、
 ぼくの人生の中でも何回かあったよ。

 ぼくの場合は、「弱い父親」を間にはさんで、
 母親はなんとか切り抜けようとしたんだけれども、
 まあ、それもうまく行かなくて。

 それで、ぼくの家では、
 母親が逃げていたし、
 いま現在進行形で逃げてもいるんですよ。

……。
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